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2022年03月16日13:41

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第17回大阪アジアン映画祭 「横浜聡子監督 短編特集」

昨年好評を得た「いとみち」の横浜聡子監督の、短編映画3本立てを上映

「ホンスンドンスコスコ」(2014年)
男(鈴木亮平)が、謎の男(宇野祥平)に背後からナイフを首に突きつけられている。
身動きできない切迫した場面なのだが、とつぜん部屋に電話が鳴り響く。
いったんナイフから逃れ、男が電話に出ると妻からで「亀がひっくり返っていないか見て」と言う。テーブルの下で亀がたしかに甲羅を下にしてもがいている。だが男は亀をそのままにして、ほんとうに妻からなのか確かめるため、合言葉を言い合う。「ホンスンドン」そして電話からは「スコスコ」。
ソファに戻った男は、並んで座る謎の男と「ホンスンドンス」「コスコ・・」と、合言葉をヘンな区切りで言い合うのだ。
わずか4分のショートフィルムなのに、なんともいえないおかしさと、まったく予想の衝かない展開。カメラワークも面白い。


「ちえみちゃんとこっくんぱっちょ」(2005年)
青森の春は汚いー。というナレーションから始まる映像は、雪が中途半端に溶けた青森の町。
のり子(鈴木由美子)は、この地で歯科技工士として働いている。
差し歯や入れ歯を作るのり子は、上司から「丁寧すぎるのもいいけど遅い」と注意される。
東京に出稼ぎに行っていた父が連れて帰って来たじゅん子は、のり子よりも年下。
しかし、じゅん子は一日中、大きな木箱の中に入って過ごす。

同級生のちえみから結婚式の招待状が来た。
なんとなく浮かない顔ののり子。昔は彼女とは仲良しだったがー。

町なかで犬が激しく鳴いている。飼い主らしき男はなぶるようにして犬を叩いていた。
複雑な気持ちになるのり子。

父とは正式に結婚していないじゅん子から妊娠を告げられる。
だがその後、じゅん子はクルマを運転して事故を起こし重傷を負った。お腹の子どもも死んでしまう。
そしてなんと東京から、じゅん子の「夫」がやってくる。じゅん子は既婚者であることを隠し、逃げるようにのり子の父と青森に来ていたのだった。

やがてじゅん子は家を出て行き、父も出稼ぎに戻る。ちえみは結婚後東京に行くという。
雪道を見ながら、のり子の頭に悪夢のようによみがえるのは、昔、ちえみが暴力を受けているところを目撃しながら、助けられなかった苦い思い出だった。

のり子が、犬をいじめていた男の家にさしかかると、突然、家が爆発し、窓から男が飛び出して宙を舞う。
横浜監督の映画美学校修了制作作品。52分の短編だが、青森という地方都市での若い女性の鬱屈と、その鬱屈の下にさらにある、苦しさ。
それが吐き出せない生活ののり子と、いきなり出奔して青森に住むじゅん子。
対照させつつ、ラストシーンはそれを解き放つような、爆発のシーン。
横浜監督のセンスを感じるデビュー作だ。


「有村架純の撮休 第5話 ふた」
突然、撮影が中止になり、俳優はその休みをどう過ごすのか、空想を膨らませたwowow制作の26分の短編ドラマ

有村架純は、急に丸一日、撮影の中断で休みが出来てしまった。
先輩女優からもらったジャムの瓶のふたを開けようとするが、おそろしく堅くてまったく開かない。ふたを強くたたいてみても無駄。

それで、休みと言うこともあり、瓶を持ち、変装して自転車に乗って出かける。
コンビニで店員(ピーター・フランクル)に開けてもらおうとするのだが、彼は店の商品と勘違い、さらに瓶に貼られたラベルの、見慣れない外国語を読み始めたものだから「もう、いいです!」と有村は瓶を取り上げて出ていく。

貴重な一日がどうしたことか、ふたを開けることに費やされていってしまう。
神社で出会ったふたりの中学生に、女優の有村架純本人だと明かし、ふたを開けれくれるよう頼むのだが、ふたりは言い争ったり、とっくみあいになったり、はては公民館の卓球場まで有村もついていくことになるのだが・・。

この短編もなんともいえないおかしみと、フィクションながら本当に有村架純に起こったみたいなリアルな味わいが楽しめる。
出演はほかに野間口徹、黒田大輔。


3本立て短編を見終わって、ちょうどこの日見に来ていた友人と帰ろうとしていたら、映画館ロビーに、なんと横浜聡子監督ご本人が!

わたしは興奮しまくって、つい、前のめりに話しかけてしまいました。

というのも、監督の商業映画第1作の「いとみち」を昨年見たのだが、あの映画で一番うまいな、凄いな、と思ったのは、女子高生の主人公「いと」が、校外学習で史料館に行き、戦時中の青森空襲の様子を見たり、空襲体験者に話を聞いたりするシーンだ。
原作では縄文遺構である「三内丸山遺跡」を見学するシーンになっている。
それをあえて、戦争を記録する史料館の見学に変えたのは、さすがだと思った。
「若い世代への戦争体験の継承」の困難さが、近年課題になっている。
それを、映画というエンタメ作品の中で、押しつけがましくなく、さりげなく、自然な形で高校生が戦争の歴史を学ぶ、という脚本にしたのは、監督の手腕である。

・・・ということをあがりまくって喋ってしまった。
でも、これは監督ご本人にどうしても伝えたかったのだ。
横浜監督は小柄で、知的な感じのする女性で、あんなエネルギッシュな映画を撮るのが驚くほどだが、「そう言っていただいてありがとうございます」と丁寧におっしゃってくださった。
そのあと、友人ともども一緒の写真にもおさまって下さり、わたしには、とても有意義な一日になりました(*^^*)
(3月13日、シネ・リーブル梅田)
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