冒頭、武田信玄(仲代達矢)と、影武者に仕立てられた男(仲代達矢の二役)、信玄の弟・信廉(山崎努)の三人の会話のシーンがカットなしのワンシーンで7分近く続く。
男は盗人で、はりつけにされそうだったところを信廉が、兄にそっくりなのを見て「影武者として使える」と思い、連れてきたのだった。
信玄は上洛の野望を持っていたが、野田城の戦いで狙撃される。
彼は自分の死は秘匿し、跡継ぎの竹丸が大きくなるまで3年もちこたえるように遺言を残していた。
信玄の死後、遺言通り死んだことは知らされず、影武者が信玄のふりをすることに。
これを知っているのは山縣昌景(大滝秀治)、土屋宗八郎(根津甚八)ら、ごく一部の重臣だけ。
影武者に、城の部屋の配置など、細かく教え込む。
竹丸は影武者の信玄と対面すると、子どもの勘なのか「おじじではない!」と言い、重臣たちを冷やっとさせるが、「おじじ様はいくさで、面やつれされたのです」といい含めた。
側室たち(倍賞美津子、桃井かおり)と対面したときも、うまくかわし、臣下たちとの評定の場でむずかしい決定を求められると、影武者は機転を利かせて対応。
重臣たちもそのなりきりぶりに感心する。
だが、徳川家康(油井昌由樹)や織田信長(隆大介)は、実は信玄は死んだのではないかと疑いだす。信長は南蛮の薬を献上する、という名目で宣教師を遣わしもした。
そんな家康や信長を見て、信玄に対しわだかまりのある庶子・勝頼(萩原健一)は、出陣しようとして、武田家は混乱。
そして、信玄しか乗りこなせない愛馬に影武者が乗馬して振り落とされたところ、川中島の戦いで上杉謙信に付けられた傷がないのを、側室に見破られ、とうとう影武者は武田家から追放の身となった。
長篠の合戦がはじまった。
武田側は徳川・織田の連合軍の鉄砲隊に敗れ、騎馬軍は次々と撃破された。
死体が転がる荒野を、影武者は徳川・織田軍に立ち向かおうと駆けていくが狙撃されてしまう。
彼は最後の力を振り絞って河原へ。
川には「風林火山」の旗が沈んでいた。それに駆け寄ろうとしたがそこで力尽き、影武者の遺骸は、旗と共に川を流されていくのだった。
1980年製作、カンヌ国際映画祭でパルム・ドール受賞。
しかしそれより「影武者」が世間の耳目を集めたのは、前年の、本来の主役(信玄と影武者の二役)だった勝新太郎が、黒澤明監督と衝突して降板した事件ではなかったか。
あの「勝新」と黒澤監督だもんなあ・・そりゃうまくいかんやろなあ、と思うものの、勝新太郎が演じてたらどんな映画になってただろう、と思いもする。
「影武者」が上映されたときは、わたしは田舎の高校3年で、地元には映画館なんてないし、ましてやいちおうは受験生、この映画見ないままになっていて、今回が初見である。
これも先週見た「乱」同様、お金かかってるなー、という大エキストラ。信玄の屋敷は撮影のため、わざわざ建てたらしい(;゚Д゚)
制作費が膨大なため、ルーカスやコッポラに協力を仰いでいる。
絵心があり、みずから絵コンテをこなす黒澤監督のイメージを再現すべく、演出や美術でも苦労のあとがうかがえる。
冒頭の長回しのあと、伝令の武者が城の中を疾走するシーンや、朝日や夕陽を浴びて軍勢が行軍するシーン、影武者が夢の中でさまよう幻想的なシーンなどもみどころ。
ラストシーンで影武者が流されていくところは空撮で、これもダイナミックに見せている。エンドロールに「日本航空」の名があったので日航の協力かも。
40年以上の映画になるので、大瀧秀治や根津甚八、萩原健一など主要キャストも鬼籍に入ってしまっていて、年月の流れもしみじみ感じました。
(3月9日、NHK BSプレミアム)
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