私はいわゆる「配信」で映画を観るのは好まないので、今までどこのサービスも使ってなかったのですが、ちょっと必要に迫られまして、仕方なくアマプラってやつを使う事にしました。
で、どんなのが観られるのかと検索してみたら、なんとフレッド・ジンネマンの初期作品「暴力行為」が!
昔、小林信彦氏のコラムや和田誠氏のエッセイでタイトルのみは知っていたものの、あまり観る機会のない作品でしたので、これ幸いと観てみることにしました。
いや、こりゃあ、確かに傑作です。
建設業者として成功し、家庭的にも恵まれた男の周辺に現れる禍々しい影。
その影の主はポケットに拳銃を忍ばせ、不自由な足を引きずりながら男の近辺に幾度となく姿を見せます。
やがて明らかとなる男たちの過去のいきさつと、戦争が残した深い傷。物語は二転三転しながらやがて両者の対決へ・・・。
不条理スリラーとしてもウエルメイドな作品ですが、ここで描かれるのは「良心」と「保身」の板挟みになる男の苦悩です。戦争中に犯した過ちを悔いてはいるけれど今の平穏な生活も守りたいという主人公の気持ちは決して身勝手と断罪できるものではありません。極限状態の中で下した判断の誤りの帰結であったものから、戦後何年経っても逃れることができないとは、なんと恐ろしい事か。
ジンネマンの、戦争に対して向けられた怒りがひしひしと感じられる佳作でした。
もうひとつ、今度はワンコインDVDで、これまた昔から観たかった作品を。
J・リー・トンプソン監督の痛快冒険サスペンス「北西戦線」です。
これがまた、最高に面白い! インドを舞台に、父王を暴徒に殺された王子とその家庭教師を守って、オンボロ機関車で英国支配圏への脱出を図る英軍将校の活躍を描いた快作です。
機関車と騎馬隊のスケールの大きな追撃戦、壊れかかった鉄橋での綱渡り走行など、手に汗握る見せ場が満載で、もう、お腹いっぱいになりましたね。
娯楽作品としても一級品ですが、西洋と東洋、キリスト教圏とイスラム教圏の根深い対立の構図をさりげなく描き、観る者を唸らせます。特にラスト近くで、自分を守って戦ってくれた主人公に対して王子が「やがて私は、あなたと戦うことになるでしょう」と告げるシーンは、意味深です。
こういう、観る価値のある旧作が観られるのであれば、配信や廉価DVDも捨てたものではないですね。
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