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2021年11月27日09:51

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映画「ファイター、北からの挑戦者」

ジナ(イム・ソンミ)は脱北者。父はまだ中国にいて、ブローカー経由で様子を伝えてもらっている。
ソウルのアパートに入居することになったが、不動産屋の若い男は「脱北者には30万ウォン、国から家賃支援が出るんですよ。こんないい物件、なかなか住めませんよ」と言う。

ジナは中国から父を呼び寄せたいと、食堂の下働きを始めるが、それでも足りないので、小さなボクシングジムで清掃の仕事も掛け持ちする。

ある日ジナが帰宅するとアパートの前に例の不動産屋の男が。
酒に酔って強引にジナの部屋に入ろうとする。突き飛ばした際に男はケガ。
高額の治療費を請求されてしまう。

ジナはジムで、女性たちがスパークリングをしているのを見て、こころがざわめく。
それに気づいたジムの館長(オ・グァンノク)は、やってみるか?と彼女に勧める。

グローブを嵌め、繰り出すジナのパンチの強さに驚く館長とトレーナーのテス(ペク・ソビン)。
ジナはこともなげに「軍隊で習いましたから」と言う。
凄い、凄い、と称賛する彼らにジナは、
「北の人間はみんな特殊部隊だと思ってませんか? 韓国のドラマなんかの設定は間違いですから!」と憤る。

だが、ボクシングはジナの心を文字通り奮い立たすことに繋がっていく。
ジムで清掃の仕事をしながら練習を始めるが、女性の練習生たちは脱北者のジナを見下す。しかし、試合でジナに負けてプライドが傷ついた彼女は、ジムをやめて移籍してしまった。

ジナはソウルで訪ねたいところがあった。
いかにも裕福そうな家に暮らす主婦の姿ー。
それは彼女の実母だった。母はジナが12歳の時、夫や子供を置いてひとりで脱北。
韓国で再婚して女の子も設けていたのだ。

ジナの姿にこっそりお金を渡そうとする母。
しかし、ジナは彼女をどうしても許せない。

テスは、ストイックでひたむきなジナにいつしか惹かれていく。
ジナを遊園地に誘うと、最初はこんな子どもっぽいところは・・と不満げだったジナも、みるみる笑顔に。ジムではまったく笑わないジナ。そんなに屈託なく笑う彼女の姿に、テスは愛を告白する。
ジナは「脱北者でもいいの?」と言うが「人を好きになるのに、そんなのは関係ない」と言うテス。

やがてジナはボクシングで頭角を現し、大きな大会にも出るように。
脱北者の女子ボクシング選手、はマスコミの格好の話題になり、彼女の活躍をテレビで見た母が、試合観戦にやってくる。

それでも母を許せないジナ。
話をしようとする母を振り払うと転倒。救急車で運ばれて緊急手術となる。
回復した母と向き合い、ようやく会話をするジナ。
どちらも、苦悩を抱えて生き延びてきたのは同じだった。


韓国版「ミリオンダラー・ベイビー」とでも言おうか、ボクシングという競技で、脱北者の女性が、文字通り身一つで運命を切り開いていく物語。
格闘するシーンは迫力満点。
ボクシングって「ロッキー」をはじめ、ドラマティックな人間劇の素材にはうってつけなのだと思う。それは殴り、殴られて、上を目指し、明日を夢見るから。体に響く痛みが見る者にも共有されるから。

主役のイム・ソンミは、化粧っけなしの、無表情でもくもくとボクシングに打ち込む姿など、「女優はきれいでかわいい」という枠組みを反転させる存在感。
館長のオ・グァンノクは、日本で言えば田中泯みたいな感じ。ボクシングの場で様々な人間模様を見尽くしてきたようなまなざしが印象的です。
(11月24日、テアトル梅田)
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