TVディレクターの由宇子(瀧内公美)は、女子高校生のいじめ自殺を追ってドキュメンタリーを制作中。
女子高生の父親(松浦祐也)のインタビュー取材を、自殺したという川辺で撮影していた。
学校側は、女子高生が講師の男性と恋愛関係にあったと指摘、いじめなどないと釈明。
しかし、事件のあと、講師の男性も自殺。SNSの誹謗中傷の書き込みもあって、講師の家族も引っ越しを余儀なくされてしまった。
由宇子は、高校の隠蔽体質が問題だと、講師の遺族にもインタビューを依頼し、「事件の闇」を追究する番組作りをすすめていく。
しかし、テレビ局の上層部の判断で、由宇子の企画は潰されていく。憤る由宇子。
彼女の父・政志(光石研)は、高校生向けの小さな進学塾を経営していて、由宇子も夜そこを手伝い、生徒からは「ゆうこ先生」と慕われている。
ところがある日、由宇子は、生徒の萌(河合優実)から衝撃的なことを聞かされる。
萌は父子家庭で、父・哲也(梅田誠弘)は定職についておらず経済的に苦しい。
由宇子は、なにくれと萌のことを気にかけるのだが、萌が「わたし、妊娠している」と打ち明けた。
しかも相手は、父・政志だというではないか。
父を問い詰める由宇子。関係を持ったことを認める父親。
許せない思いをぶつけながら、この混乱を収拾するため、由宇子は、以前に取材で知り合った医師(池田良)に、薬での堕胎をひそかに問い合わせる。
しかし、萌は子宮外妊娠で危険な状態。
さらに進学塾の男子生徒から「萌は俺ともヤッてるし、売春もしている」と聞かされた由宇子はクルマの中で彼女に問いただすが、萌はクルマから路地に飛び出し、駆け出して行ってしまう。
萌をさがすうち、彼女がクルマにはねられたことを知る由宇子は動揺。
危篤状態だった。
駆けつけた父親の哲也に、由宇子が自分の父と関係して妊娠したのだと告げると、逆上した哲也は由宇子の首を絞め、由宇子は昏倒する。
「問題作」「衝撃作」「今年度の傑作邦画」などと、なにかと話題になっている映画。
昨年の釜山映画祭でも受賞している。
わたしはその内容よりまず、主演が瀧内公美、というところに興味を引かれた。
昨年秋、大阪韓国映画祭で上映された「ユニヘ」という韓国映画(小樽が舞台)に出演しており、きれいな女優さんだなあ、と強く印象に残っていたのだ。
瀧内公美って知らないなあ、と思ったが、けっこうドラマや映画に出ている。
もっと活躍できる人じゃないかな? と思っていたところ、この主演作が話題に上っていた。
彼女の美貌が、意志が強くて、思ったことは突っ走ってやり通す、という由宇子のキャラにぴったりだ。ちょっとどこか井川遥に似た美人だ。
この映画が衝撃作、とされるのは、立て続けに思いもかけぬ出来事が発生するストーリー、真相究明こそがジャーナリズムの「正義」と思って突き進む由宇子なのに、身内の不祥事は、なんとか覆い隠そうとせざるを得ない矛盾などがテーマにあるからなのだろうけど。
音楽がほとんどなく、緊張感ある画面は、まるでドキュメンタリー番組そのものを見ているかのよう。
しかしながらわたしは、見終わって、傑作とは言い切れないモヤモヤした感ばかりが残ってしまう。
いろんな問題提起を投げかける「社会派映画」は多いし、もちろんこの映画の意図もそれなのだろうけど、矛盾や不正をドサリとばかりに観客に投げつけられて、どこか放置状態にされた感がぬぐえない。
出演はほかに、講師の遺族に丘みつ子、TV局の取材クルーに川瀬陽太など。
(10月8日、テアトル梅田)
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