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2021年09月13日21:06

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台湾製ホラー映画「返校」

1962年の台湾。
街には「共産党スパイの告発は、国民の義務です!」というアナウンスが流れている。
当時の台湾は戒厳令下、厳しい思想統制が敷かれていた。

「禁書」と指定された本は、所持したり読んだりすると逮捕される。
「自由であること」が罪になる時代だったのだ。

それでも若者は、自由に憧れる。
翠華高校では「禁書」の読書会がひそかに行われていた。
読んでいるのは、ゴダールの詩集。
チャン先生(フー・モンブー)やイン先生(チョイ・シーワン)が開催し、幾人かの生徒たちがこっそり参加していた。

高校の女子生徒レイシン(ワン・ジン)が、放課後眠り込んでいたところ、目を覚ますと学校の様相は一変。
誰もいず、真っ暗な校舎にはおどろおどろしい「忌中」のお札が貼られていたりしていた。
校内をさまよう彼女は、ジョンティン(ツォン・ジンファ)と出会う。
ジョンティンはレイシンの後輩だが、秘密の読書会で、彼女に思いを寄せていた。
ふたりは学校から出ようとするのだが、どうしても出られない。
そして、ゾンビのような化け物に出会い、逃げ惑うことに。
ふたりの心には、過去の出来事が去来する。
高校常駐の国民党のバイ教官(チュウ・ホンジャン)。生徒でも、スパイの疑いをかけると暴力的に取り締まって恐れられていた。
突然、連れ去られたレイシンの父。母は精神を病んでしまっている。

ある部屋に入ると、拷問された読書会のメンバーが。
誰かが、会のことを密告したのだという。

レイシンとジョンティンは、悪夢のような学校をさまよいながら、友人やチャン先生をさがし続けていた・・


戒厳令下、1962年(わたしが生まれた年だ)が舞台の、台湾の高校生が主人公、と聞いて、最初は社会派ものの青春映画だと思っていたが、これはかなりおぞましいホラー映画(R15です)。
残酷シーンは何度も目をつぶって画面を見ないようにしたほどで、得体のしれない恐ろしさ、というのは、まさに当時の「誰が味方で誰が密告者かわからない」不安感の象徴かもしれない。

学校と言う密閉空間って、いわばホラーの舞台にもってこいなのだろう。
いきどまりの廊下、たくさんの教室、だれがいるかわからないホール・・・

いまでこそ台湾は(大陸が独裁大国になった分)、自由で民主主義の国、のイメージがあるが、かつてはながらく戒厳令が続いていた。
その当事者の国民党が、いまではむしろ「親大陸」なのが、歴史の皮肉と言うべきか。

ラストシーンは、当時の人々の、自由な言論を求める気持ちが込められていて、切ない。
(9月10日、シネマート心斎橋)
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