この邦題の付け方、あきらかにあの「明日に向かって撃て!」のもじりですが、こちらはユーモアたっぷりのアルゼンチン映画。
2001年、首都ブエノスアイレスから離れた、ちいさな田舎町。
ほおっておかれた農業用サイロが朽ちてしまい、ここにあらたに農業協同組合をつくってみようじゃないか、とフェルミン(リカルド・ダリン)は考える。
フェルミンはかつてはプロサッカー選手で町の英雄だったが、引退した後はガソリンスタンドを経営し、妻のリディア(ベロニカ・ジナス)と仲良く暮らしている。
フェルミンは地元の仲間の、タイヤ修理工のアントニオ(ルイス・ブランドーニ)、列車は停車しない町の自称・駅長のロロ(ダニエル・アラオス)、運送会社の女社長・カルメン(リタ・コルテセ)らに声をかけ、農業協同組合設立の意義を説く。街の活性化になるし、雇用も生まれる。
元工兵のアタナシオや、商売に失敗してばかりのエラディオとホセの兄弟も同意してくれた。
そうやって皆から出資してもらった15万ドルを預けに銀行へ。
貸金庫に入れようとすると、なぜか支店長のアルバラドはしつこく、フェルミンの口座に入れるようすすめる。出資者の同意が要る、というフェルミンに、いますぐ口座に入れていたほうが何かとあとの融資に有利だという支店長に根負けし、口座にフェルミンは入金。
ところがなんと翌日、アルゼンチンは金融危機で債務不履行に陥り、口座が凍結されてしまった!お金が引き出せないばかりか、このことを知っていた支店長と弁護士のマンシー(アンドレス・パラ)は結託して、顧客のドル預金を持ち逃げしてしまっていたのだ。
怒りに震えるフェルミンは、リディアと一緒に支店長の元へ。
しかしまったく相手にされず、知らないとシラを切られる。
八方ふさがりの状態に絶望した夫婦はその帰り、交通事故に遭ってフェルミンは重傷、リディアは亡くなってしまう。
フェルミンの息子・ロドリゴ(チノ・ダリン)が、大学を休学して働くため家に帰って来た。妻もお金も失い、抜け殻のようなフェルミン。
そのあいだ、アルゼンチンは、大統領が5人も交代する混乱状態。
だがある日、アントニオとロロがフェルミンのもとにやってくる。
知り合いの看護師が担当の入院患者が、マンシーの別荘の土木作業をやったのだが、やたら大きな穴を掘らされたと。
なにか怪しい。これは、奴が持ち逃げしたお金の地下金庫では?
かくして、フェルミンたちはマンシーにリベンジし、お金を取り戻すためチームを結成。
別荘地に忍び込むと、たしかに地下金庫と思われる金属の扉がみつかった。
しかし、侵入者が来ると防犯会社からマンシーの携帯に警告が来る仕組みだ。
そのため、扉を開けようとするどころか、すぐに皆で退散せねばならなかった。
ロドリゴは、園芸店員のふりをして、マンシーの事務所に出入りし、こっそり請求書のファイルを調べて、防犯システムの会社をつきとめる。
フェルミンは、映画好きだったリディアと見ていた映画「おしゃれ泥棒」のことを思い出した。
「ブーメランだ!」
しつこくアラームが鳴ると、装置に不具合があると思って、マンシーが金庫のバッテリーを切るのでは? と考えた。
どの電柱から電気を引いてるかつきとめ、元工兵のアタナシオがコードを切断。
マンシーはそのたびに車を走らせて別荘地へ出向き、イライラ。バッテリーをとうとう切ってしまう。
また、このあたりでは荒天で落雷があるとよく停電が起きる。
それで大雨の日に変電所の変圧器を破壊して、この一画だけを停電させれば、金庫の防犯装置が解除される、と考えたフェルミンたちは、作戦をたてる。
しかし、当日、用意していたダイナマイトが大爆発。
広範囲に停電が起き、結婚式に出ていたマンシーも会場が真っ暗。
彼はひょっとしてよからぬことが起こっているのでは?と心配になり、口説こうとしていた女をうっちゃって別荘へ。
その頃フェルミンたちは金庫の扉をこじ開け、地下に山と積まれた現金の束に驚愕。
嵐の中、いくらか持ち出し、フェルミンは脱出時に金庫に火をつける。
ついにやった!
入れ違いにやって来たマンシーは、ことのなりゆきに地団太踏むしかなかった。
農業協同組合が作られ、廃墟のサイロも立派な建物に。
ある日、アントニオの工場に、タイヤ修理を頼みにやって来たマンシー。
アントニオはマテ茶にイタズラをして、マンシーに「修理の間、これどうぞ」と渡すのだった。
いや〜、これはとても痛快な映画!
自国の経済的混乱という「悲報」を逆手に取って、こんな面白い映画を作ってしまうとは、アルゼンチン映画、やるね! という感じです。
主演のリカルド・ダリンは「瞳の奥の秘密」がすごく印象的で(この映画も傑作。犯罪ミステリーと、主人公の切ない恋をからめていました)、今回は愛妻家でリベンジ作戦のリーダー格、やっぱりいい味出しています。
アルゼンチン版「オーシャンズ11」と、宣伝では謳っていますが、やられたらやり返す、痛快なストーリー。
ペロン主義者だというロロがアナーキストのバクーニンの「一人も守れない国家は必要ない」という言葉を引用したシーンもあったり、なかなか奥が深いです。
ちなみに見たのは、さいきんオープンしたイオンシネマ系列の映画館。
この時期に、チャレンジャーだなあ、経営大丈夫?と思ってしまう。
わたしが行った時、観客は3人だけでした。
(8月25日、シアタス心斎橋)
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