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2021年01月23日10:33

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1439

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1439       

斎藤幸平 「人新生の『資本論』」     

著者は大阪市立大学大学院の准教授。ドイツの
大学を卒業した哲学博士。1987年生まれという
若さ。

近年、世界中でマルクスが見直されている。
特に若い世代がマルクスを再評価している。
マルクスを読んだことのない多くのアメリカの
若者が大統領選でサンダース候補を支持したのも
記憶に新しい。

それだけ今の資本主義は問題だらけという
ことなのかもしれない。世界の南北の所得格差と
一国内の個人間の所得格差は広がる一方だし、
気候変動をもたらす環境問題に対し為すすべを
もたない。また資本主義と両輪であるはずの
民主主義がうまくいっておらず、中国などの
強権政治が幅を利かしているのが今の社会だ。

著者は、マルクスの有名な「資本論」もさることながら
晩年のノートに注目した。一般に、生産向上については
社会主義においても資本主義と同様にめざすべきと
捉えられているが、そうではなく脱成長をめざすべきと
言うのだ。

資本主義は常に成長をめざしてきた。国内市場が
いっぱいになれば輸出を行い、それもいっぱいと
なれば、新たな市場を探した。植民地もつくった。
荒れた土地を開墾もした。しかし、もう新たに開発
できる所はない。地球温暖化も新しいウイルスも、
すべて人間が為した行動の結果なのである。

パリ協定では2100年までの気温上昇を産業革命
以前と比べて2度未満としているが、現状では
4度を下回りそうにない。実際、多くの科学者は
1.5度以内でなければと言うが、現状は厳しい。
SDG(持続可能な成長)に多くの国が合意した
わけだが、SDGは甘く地球を救えないと著者は
警鐘を鳴らす。もはや緩やかな改善では何も好転せず、
抜本的な対策、すなわち社会の構造にメスを
入れなければいけないと言うのだ。そして、
その具体的な方法も事例を挙げて紹介している。

これはスケールの大きい注目すべき著書だ。
より多くの日本の、世界のリーダーたちに
読んでもらいたいし、もちろん一般市民も
日常の生活から一歩離れてじっくり読むべき
書だ。パンデミックの今、このような本が出る
のは良いタイミングと思う。


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