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2020年11月27日15:10

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第6回大阪韓国映画祭「移葬」

ヘヨン(チャン・リウ)は5人きょうだいの長女。
一人息子ドンミンは、問題行動が多くて落ち着きがなく、小学校の担任は彼の悪ふざけの様子をスマホで撮って、送りつけてくる始末。
次女のグモク(イ・ソンヒ)は、お金だけが信じられるというタイプ。三女のグミ(コン・ミンジョン)は結婚を控えているが、細かいことにセコく、めんどくさい婚約者に少々うんざり。四女のヘヨニ(ユン・グムソナ)はいまだに大学生だが、なりはまるで男性、過激で思ったことはすぐ口に出す直情型。
フェミニズム的アジビラを構内に貼るが、男子学生のものと思われる「お前だって男のタネから生まれたくせに」という落書きにブチ切れてしまう。

彼女たちは亡き父の墓を移葬するにあたり、父の兄である伯父(イ・ヨンソク)から呼び出されていた。
業者から移葬の際、遺体を火葬するよう言われていたのだが、弟もそれは望んでいない、と伯父は難色を示していたのだ(韓国の田舎では、土葬のところがまだある)。

きょうだいの末っ子である弟のスンナク(クァク・ミンギュ)とはどうしても連絡が取れず、仕方なく姉妹4人とドンミンで、ヘヨンの運転するクルマで、伯父の住む田舎へ向かう。
しかし、途中に立ち寄ったショッピングモールでドンミンがいなくなったり、グモクの夫の浮気現場に遭遇したりと、道行きはハプニング続き。

途中、船を乗り継ぎ、ようやく人里離れた伯父宅に着いたものの、伯父は「どうしてスンナクが来ていないんだ。男がいないと話にならない。スンナクを連れてこい」とかたくなに言う。
ヘヨニはこれに激怒、「男がそんなに偉いのかよ!」。かくして伯父と大喧嘩になるものの、結局弟を探しに行くことに。
ヘヨニはやってられない、とばかりに憤然とクルマを降りてしまう。

スンナクとは音信不通状態だったが、SNSを使って探したところ、彼の「元カノ」というユンファと連絡が取れた。
だが、ユンファはろくでなしの恋人とはもう別れた、と言って、口から出るのはスンナクの悪口ばかり。
彼女もともない、スンナクが住むアパートを突き止め、ノックするが居留守を使っている。姉たちはしびれをきらして、半地下の窓をたたき割ってしまった。

ようやく、スンナクをつかまえたものの、さらに思いがけない事態が。ユンファは妊娠していて、中絶費用をスンナクに出してほしい、と言うのだ。
もちろん、ひきこもり生活の彼にはそんなお金はない。

亡父の墓の移葬にともない、業者から500万ウォンの補償金が出るという。
そのお金をめぐっても、三女のグミは「わたしの結婚祝いにしてよ」と言ってたのだが、ここにきて、中絶費用にしたほうがいいのか、ヘヨンたちは思案せざるを得ない。

再びきょうだいたちは伯父宅へ向かうのだが、往路、いったん伯父宅に預けていたドンミンがまたしても行方不明になり、気をもむヘヨン。
じっとしていられないたちのドンミンだが、母親とは違うタイプの、昔気質のおじいちゃんの叱責に、なんとか言うことを聞くようになる。

伯父はスンナクが来たので上機嫌。
食事の席でスンナクは、伯父の言いなりで「火葬しないほうがいいと思う」と言うものだから、姉たちは激怒、さらにユンファの妊娠が伯父伯母にわかり、事態はさらにややこしいことになってくる。


これはすごく面白かった!
儒教社会の色濃い韓国では、跡取りで家の祭祀をする男の子を生まないとダメだ、という空気がいまだにある。物語の、上4人が女、末っ子に男というきょうだい構成も、「男の子が出来るまで母親が生み続けて、5人目にようやく男の子」という事例なのがすぐわかる。
5人のキャラクター造形がユニークで、反発したり、喧嘩したり、言いたい放題だったり、いったいどうなるかと思ってしまう、伯父宅への道行き。
「跡取りの男の子」ながら、一番頼りないスンナクに、姉たちが「あんたばっかり親に優遇されてた」と怨嗟の声を投げつけるところなど、「82年生まれ キム・ジヨン」同様、家父長制の犠牲になる女性たちのリアルさがよく出ている。
ヘヨニが激怒した落書きのシーンも、昨今の韓国社会で噴出する「ミソジニー」を暗示している。

いきがかり上、伯父宅に同行したユンファだったが、ドンミンになつかれる。
伯母もユンファを見て「お腹の子はきっと男の子だよ」と喜ぶ。
ダメ男のスンナクだが、なんとなくわたしは、ふたりは結局結婚して、ユンファは子どもを生み、補償金は出産費用になるのでは?と思ったのだ。

結局は、火葬を受け入れる伯父。
移葬をやり終えたあと、伯母は、手づくりの料理を姪っ子たちに山ほどもたせて、港から船で帰っていくのだった。

複雑なそれぞれの感情や、韓国社会の問題が実にうまく脚本に反映されている意欲作。
「第35回ワルシャワ国際映画祭」の新人監督のコンペティション部門で大賞を受賞している。日本でも一般上映してほしいな、と思う。
(11月22日、グランフロント大阪・ナレッジシアター)
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