「ユニへ」は、韓国では釜山国際映画祭でオープニング上映され、昨年11月に、韓国で一般公開されている。(以下、ネタバレありです)。
韓国に住むユニ(キム・ヒエ)のもとに、日本から届いた手紙。
『あなたが夢に出てきました。20年以上会っていないけれど、どうしていますか』という内容だが、どこか遠慮がちな文面。
ユニの昔の友だちからのようだ。
工場できつい仕事つづきのユニのもとに、別れた夫が訪ねてくる。
「疲れてるみたいだからさ、栄養ドリンクを持ってきた」と言うが、「酔って会いに来ないで!」と拒絶するユニ。
雪が降り積もった、日本の小樽の街。
ジュン(中村優子)は、父の法事を終えて帰る途中。
彼女はかつて韓国に住んでいたが、両親が離婚。韓国人の母を残し、日本人の父とともに小樽へやってきた。
そして今では叔母(木野花)と暮らしている。
ユニとは韓国在住時に知り合っていた。
ユニには高校3年の娘・セボム(キム・ソヘ)がいた。
セボムはユニへ届いた手紙をこっそり読み、ボーイフレンドも巻き込んで一計を巡らせる。
「卒業旅行は母娘で行くものよ」とユニに話し、小樽への旅行を予約。
母親がそこに住む友達に会いたいんじゃないかと思ったのと、ちゃっかりボーイフレンドも小樽市内のゲストハウスを予約させ、自分も彼氏との卒業旅行を楽しもう、という魂胆だった。
ユニは工場で休暇を貰おうとするが、上司の栄養士の女性はいい顔をしない。
クビになることを予想しながら、日本へ旅立った。
「雪はいつまで降るのかしらね・・」とジュンの叔母はぼやきながら、雪かき。
ジュンは獣医をしていて、猫を連れてくるリョウコ(瀧内公美)と親しくしていた。
小樽で、ユニは手紙の番地をもとに、ジュンの家の前まで行ってみるが、玄関から出てくるジュンの姿に、なぜかすぐに物陰に隠れてしまう。
温泉に入ったり、ユニとセボムは小樽の休日を楽しむが、すぐに、セボムのボーイフレンドも、示し合わせて小樽にやってきていることがバレてしまった。
逆に、それで堂々といちゃつくふたり。
セボムはジュンの叔母が経営するカフェに出掛け、叔母に英語で話しかける。
そして母のことを話して、カフェに母が行く約束をするのだった。
ジュンは自分が秘密をかかえて生きてきた、という屈託をリョウコにも語るが、そのひとつは母親が韓国人であることでもあったが、それだけではなさそうだった。
いよいよ韓国へ帰る、という前日の夜、ようやく小樽の観光名所の運河で、ユニとジュンは再会する。
ふたりのあいだに流れていたのは、なつかしい、うれしい、という単純な思いではなかった。
ジュンが韓国に居た頃、ふたりは女性同士ながら恋愛関係にあったのだ。
しかし「何かの病気で治療が必要だ」とユニは周囲に説得されてしまう。
そして写真店を営む兄から紹介されて結婚したのが、別れた夫だった。
気持ちを殺してジュンを忘れようとしたユニは、自分を罰するようにして生きてきたのだった。
だが、小樽の美しい風景の中で、彼女の心はだんだんとほぐれていく。
セボムと韓国へ帰ったユニは、元夫から再婚の知らせを聞く。
彼は「真っ先にきみに知らせたかった」と照れ臭そう。
そしてユニも心から、元夫のことを祝福できた。
セボムもボーイフレンドも高校を卒業し、あたらしいスタートを迎えていた。
この映画、実は半分以上、小樽ロケで、日本語のセリフも沢山出てきます。
いわば小樽のご当地映画。
雪が降り積もる冬の小樽の風景は美しいです。
岩井俊二監督映画でやはり小樽を舞台にし、韓国でも大ヒットしたという「Love Letter」へのオマージュかな?と思いました。
なぜ、ユニへのジュンからの手紙が遠慮がちなのか、友人だったようなのに20年以上も音信がなかったのはなぜなのか?
もどかしい思いでスクリーンをずっと見ていたのが、最後になって謎が解ける感じです。
しかしながら、それがわかると、観客もユニをいたわりたい気持ちになる、そんな作品でした。
(11月22日、グランフロント大阪 ナレッジシアター)
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