(その2から続く)
白毫寺は恩田陸さんの小説「まひるの月を追いかけて」に出てくる通り、山門へは長い石段を登らねばならない。
足の悪いわたしは石段を見上げて一瞬、躊躇したが、まあゆっくり登っていけば大丈夫だろう。石段の両脇には萩が生い茂り、花が咲いていたら、さぞかし見事だろうと思われる(萩の見ごろは9月中旬〜下旬らしい)。
ところが石段をのぼりきって山門をくぐってみると、そこには絶景が待っていた!
生駒山を正面に、奈良市内が一望できるのである。
おお、境内がシティビューになっていたとは!
生駒山のふもとの方に見えるのが唐招提寺。
本堂内には、閻魔大王像をはじめ、興正菩薩、阿弥陀如来、地蔵菩薩、文殊菩薩などの寄木造の像が並び、いずれも重文。
境内の奥には、野仏が並ぶ散策路が続く。
また石段を下りて、もと来た道を戻りつつ、興福寺の方に向かう。
さすがに白毫寺から興福寺まで徒歩だと、けっこうな距離だが、頑張って歩く。
興福寺の五重塔は、今後修復が始まるとのことで、柵が設置され、すぐ近くまでは行けないようになっている。
中金堂では吉祥天倚像(きっしょうてんいぞう)が特別公開中。
吉祥天ってもとはヒンドゥー教の女神で、仏教に取り入れられてからは、微塗工運、富と繁栄、財産と知恵を授ける神として、信仰されるようになったとのこと。
そのほかにも国宝の四天王像、重文の薬王・薬上菩薩立像なども公開されていたのだが、例によって、いろんな仏像をてんこもりで1日で見たため、どれがどれやら、今思い出してもごっちゃになっております(;´∀`)。
ここで帰宅するつもりが、北円堂も特別公開中とのチラシをもらい、ううむ、やはり、何度も見たとはいえ、運慶作の無著・世親像を見に行かずばなるまい・・と北円堂へも足を延ばすことにした。
だって、無著菩薩立像の優しいお顔は、心安らかにしてくださるんですよ。
箱をそっと持つポーズも、なんだかいいんですよね。
というわけで、1日で、奈良国立博物館の正倉院展でいにしえの宝物、志賀直哉旧居で文豪の息吹き、新薬師寺で守護神に出会い、白毫寺で奈良を見下ろし、興福寺でまたまた重文と国宝にまみれ、寄ってきた子鹿には、手をペロペロと舐められてなつかれた、なんとも濃厚な奈良路でした。
(10月26日)
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