毎年この時期になると見に行っていた「正倉院展」。
しかしコロナ禍で、今年の開催はだいじょうぶだろうか？と夏ごろには危ぶんでもいたが、無事開催。ただし、事前に日時指定のチケット購入が必要で、当日券発売がなし。
関西に住まうようになってから、毎年「正倉院展」を観覧しているが、いつもすんごく混雑する。ところが今年はこのシステム導入もあって、混雑がなく、初めてゆっくりと展示物を見ることが出来た。毎年、人の頭越しに展示ケースを覗き込まないといけないような混み方だったのだ。コロナ禍の怪我の功名、と言ってしまえば少々不謹慎かもしれないが。
今回の目玉は「平螺鈿背円鏡（へいらでんはいのえんきょう）」螺。
螺鈿、琥珀を敷き詰め、隙間にちりばめられているのがトルコ石。サイや鳥などの動物も描かれている。中国製と考えられ、精巧な作りと、きらきらとした螺鈿やトルコ石の輝きに見入る。
羊毛製の花氈（かせん）は、色褪せしているだけで、完全な形で残っているのが見事だ。
長さ245�僉�幅123�僂任�なり大きい。
花模様のデザインも、２１世にも通用するようなハイセンスな文様だと思う。
ああ、さわってみたいなー、と思うものの、さすがにそれはできません(;´∀｀)。
ポスターにも使われている紫檀槽琵琶（したんそうのびわ）は、実際に弾いた音色の録音を場内で流している。弦一本一本を弾き、なかなか味わいのある音。
だいぶ形状が薄くなっているものの、弦の下にハヤブサの姿が描かれている。赤みがかった色も目を惹く。思ったよりも厚みがなく、基盤は薄い。
現在、沖縄三線教室に通っていることもあって、こういった弦楽器には、以前に増してまじまじ見てしまう。おお、これは４弦なんだな。
しかも棹部分の先端が曲がっているのだ。これも面白い。ポスターでは正面からの写真なので、実際に現物を見ないと、棹部分の折れ曲がりはわからない。
ほかにも、側面に細かい草花の装飾が施された碁盤、鐙や、クッション代わりの花鳥模様のフェルトが付いた馬具、色鮮やかな臙脂色で染められたフェルトの敷物、宝石で象られた短剣、墨絵で人物像が細かく描かれた弓、胡人を模した伎楽面など印象的な宝物の数々を目にできた。
今回はコロナ禍ということもあったためなのか、「薬」や「薬袋」が冒頭にたくさん展示されている。
大黄、蘇芳、厚朴（コウボク・・ホウノキなどの樹皮を乾燥したもの）などが並び、五色龍歯（ごしきりゅうし）は、象の歯の化石だと言われ、「気持ちを落ち着かせる薬として使われた」と言う。今で言う鎮静剤ですかね。サイの角も漢方薬に使われていますね。
後半に並ぶのは毎回おなじみの「正倉院文書」。
毎年書いていることだが、墨書って、記録保存にはほんとうに最強だなって思うのだ。
１３００年前の事象を、鮮明に読むことができるのだから。
写経の文字には、毎度のことながら達筆だなあ、と字が汚いわたしは感心するばかりだし、名前や生年が記載の戸籍には「おお、この人たち、１３００年後に個人情報がダダ洩れでさらされるなんて考えてなかったろうなあ」とつい思ってしまう。
書物の借用リストとか、写経所の日々の記録が日誌のように書き連ねていたり、庶民には見ることもかなわなかった宝物と違い、これを見ると、みょうに人間臭さを感じ取れて、面白い（漢字ばかりが連なるから、添えられた注釈文がないともちろんわからないけど）。
周防・長門国の税の決算報告書もあって、２１世紀の政治家に「ほら、記録をちゃんと残して保管することの重要性って１３００年前からやってるんだから、ちゃんとわかってくれよ」とぼやきたくなってきた。
毎回正倉院展は、混雑もあって、見終わるのに２時間近くかかるのが常だが、今回は１時間１０分ほどで観覧を終わって出てくる。
すぐ近くの興福寺で中金堂の特別公開をやってるので、これも見に行くつもりだったが、まだ１０時半過ぎだ。
それで、先に以前から今度奈良に行ったら、是非足を延ばそう、と思っていた「新薬師寺」と「白毫寺」に行ってみることに。お天気もいいし、散策日和だ。
＜この項、続きます。＞
（１０月２６日）
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