☆洋ちゃんの読観聴　No. 1402

☆洋ちゃんの読観聴　No. 1402

カリン・スローター　「罪人のカルマ」
「ブラック・アンド・ホワイト」　　　　　　　　

スローターは読みだすとクセになる。この２作は
ジョージア州警察のウィル・トレント捜査官
シリーズ。だが、ウィルが主役ではない。解説の
北上次郎の言葉を借りるなら、本シリーズのウィルは
狂言回しに過ぎない。では誰が主役なのか？　毎回
主役は変わるが、すべてウィルの周りの人たちでは
あるが、すべて女性なのである。

アメリカ南部を舞台に語られる犯罪捜査のシリーズ
ではあるが、このシリーズは常に女性の社会的地位の
問題を扱っている。南部だから人種差別も扱われて
いるが、女性差別が中心だ。

「罪人のカルマ」では1970年代が舞台となっており、
ウィルの上司の若かりし頃の活躍が展開する。
警察という、さまざまな職業の中でも最も女性の
進出が遅れた業界で、勇敢な女性が偏見と闘いながら
危険な捜査にあたる。

「ブラック・アンド・ホワイト」は現代の話だが、
女性警官が主役であり、妊娠と流産の中での仕事に
尽力する。彼女の過去の失敗をリベンジしようと
する試みは痛々しい。また、彼女はウィルの恋人の
元夫の部下でもあり、この関係性がストーリーを厚く
している。

とにかく、このシリーズに登場する人物たちの
それぞれの関係は大変濃い。濃すぎる。なので
読んでいて疲れるのだが、読み終わると、次は
誰が主役なのだろう、と期待してしまう。