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2020年01月08日10:51

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シノーポリ指揮・ドレスデン・シュターツカペレの「シェーンベルグ、ベルグ、ヴェーベルン作品集」8枚組を聴いて

音楽千夜一夜第443回

2001年4月20日、ジョゼッペ・シノーポリはベルリン・ドイツ・オペラで「アイーダ」第3幕を指揮している最中に心筋梗塞の発作に襲われ、54歳の若さで夭折した。

この録音はそれに先立つこと数年前にドレスデン・シュターツカペレと録れた初期現代音楽の作品集で、マエストロの音楽愛と世界の名器の芳醇な音色に酔いながら、カラヤン、ブーレーズとは一線を画した、より親しみやすく、いうなればあまり肩を張らないごく普通の、美しいゲンダイオンガクを楽しむことができる。

私はこの傑作の森を繰り返し耳にしながら、1987年にフィルハーモニア管弦楽団と来日したジョゼッペ・シノーポリが、開館間もないサントリーホールでマーラーの5番を振った時のことを思い出していた。

サントリーホールに光文社の並河氏と私を招待してくれたのは、サントリー宣伝部の鈴木理雄さんだったが、あいにく私はその前日に「新宿ロフト」の酸欠ライヴ’(たぶん「有頂天」のケラの)で、アルテックの左スピーカーに左耳を押しつけられて身動きもならず、ほとんど聴力を失っていたから、聴きどころのアダージェットも、幽かな音波としてしか聴き取れず、泣く泣く赤坂1丁目を後にしたのであった。

茫々30余年、あの鈴木さんも、並河さんも、そして好漢シノーポリも最早この世の人ではなく、ただ私だけが生き残って、こうして彼の音楽を聴いているのが面妖なこととも思えてくるのである。

      意に満たぬマグロは捨てて一穫の千金狙う漁師を見たり 蝶人

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