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2019年12月22日22:46

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映画「家族を想うとき」

イギリスのニューカッスルに住むある家族。

リッキー(クリス・ヒッチェン)は、職を転々とするが、なかなか長続きしない。
だがマイホームをどうしても手に入れたくて、フランチャイズの配送ドライバーの仕事を始めた。

フランチャイズ元の会社から運送用のバンをレンタルできるが、中古車を買ったほうが安くつく。しかしその頭金がない。
妻のアビー(デニー・ハニーウッド)は訪問介護の仕事をしており、そのためにどうしてもクルマが必要。しかし、リッキーに説得され、仕方なくクルマを売って、配送用バンの購入資金に充てる。

独立ドライバー、とのふれこみだったが、本部のマネージャーのマロニー(ロス・ブリュースター)は、統括してる地区のドライバーたちの、少しの遅れにも容赦がない。
配送した荷物の数が収入に直結する。
リッキーも、仕事量が多く、時間に追われ消耗していく。

一方、アビーは自家用車がなくなってバスで移動することになったため、こちらも時間的な余裕がなくなり、くたくた。
老人の排泄物を片付けた日などは、次の訪問先へと矢継ぎ早に行かねばならなかった。

夫婦ともろくに顔を合わせることもできなくなり、イライラが増し、ケンカも多くなる。
そして長男のセブ(シル・ストーン)は、問題行動が多く、高校をさぼって、仲間とスプレー缶でグラフィティ(落書き)を壁に描いたりで、学校から呼び出しを受ける。
しかし、リッキーは配送業務で手が離せず、なんとかアビーひとりで学校へ。どうして父親は来ないのかと、彼女は責められるのだった。

セブの妹のライザ(ケイティ・プロクター)も、そんなギスギスしていく家族に心を痛めていた。
食事はレンジで温めて食べて、と留守番電話でメッセージをライザに残すだけの日々が続き、両親ともまともに子供たちに向き合えない。

アビーはほかの介護士の業務をさらに頼まれ、心が折れてしまう。
そして訪問先の老婦人から「いったいあなたどれだけ働いてるの? 1日14時間!? それって法律違反でしょう?」と逆に心配されてしまう。

両親の疲弊が子供にも伝わってしまうかのように、セブがまた問題を起こした。
万引きで補導され、すぐに警察に行かねばならない。
リッキーはマロニーに、息子の重大事だから、仕事は休ませてくれ、と頼むのだが、マロニーは仕事に穴をあけるな! と取り合ってくれない。
横暴なマロニーに、他のドライバーからも反発があがる。

セブはスプレー缶を万引きしていた。
叱責するリッキーにさらに反発し、家出してしまう。
リッキーとアビーは、セブの部屋のノートに、彼が壁にスプレーで描くための「下絵」のデザインを見つけ、初めて、彼のデザインや美術の才能を知るのだった。

そんなある日、なんとリッキーは仕事中に強盗に遭遇。
殴られて大けがをした上に、配送予定の荷物を奪われ、荷物管理のためのスキャナーも壊されてしまった。

しかしマロニーは、病院で診察を待つリッキーに電話をかけてきて、高額なスキャナーの弁償をしろと一方的に言う。リッキーのけがを心配することばは、一言もなかった。
電話を奪い取るようにしたアビーはマロニーに、アンタはそれでも人間か、とたまりかねて怒鳴る。

家出していたセブが戻ってきた。
さすがに腫れあがった父親を見てショックを受け、いたわるが、リッキーは、弁償金もあるし、仕事に行く、と言ってきかない。
そんな体では事故を起こすだけだ!とアビーもセブも止めようとするのだが・・・


ケン・ローチ監督作品。
本数はあまり見ていないけど、ケン・ローチ監督の映画って、とても心に響くものがあり、わたしが好きな外国の映画監督の一人である。
一貫して彼は、イギリスの社会問題をテーマに制作しているが、今回は、イギリスだけでなく、むしろ現代の日本で共感することが多い映画ではなかろうか?

長時間労働、低賃金、非正規雇用。そしてそれが、家族の生活をむしばんでいく病理。
見ていてリッキーとアビーにふりかかる出来事が、本当につらかった。
しかし、こういうある意味、「暗くてしんどい」問題を映画につくろうとするローチ監督の心意気のようなものを感じる。
登場する俳優さんも、有名どころはいないけれども、その切実さが、やはり胸を打ち、イギリスの抱えている労働問題が、日本と重なってくる。

アビーが昔の「炭鉱スト」のときの写真の話をするシーンがある。
サッチャー政権時代のことだろうか?
そういえば、ローチ監督以外でも、イギリス映画には、炭鉱労働者、失業問題がテーマの映画が多い(「リトルダンサー」「フル・モンティ」「ブラス!」など)。

また、いかにもイギリスらしいのは、マンチェスター・ユナイテッドのレプリカユニフォームを着たリッキーに、配送先の受取人から「なんでマンUのなんか、着てるんだ!?地元なんだからニューカッスルを応援しろ」と言われ、「オレはマンチェスター出身なんだ!」と返すシーン。大阪でヤクルトファンとして居心地悪いわたしにはよくわかります(;´∀`)
(12月20日、シネ・リーブル梅田)
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