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2019年12月19日14:01

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1369

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1369

島田荘司 「盲剣楼奇譚」                  

ミステリー作家の大御所である島田荘司には
探偵・御手洗潔シリーズと刑事・吉敷竹史
シリーズとがあり、本作品は吉敷刑事シリーズだ。

吉敷は東京勤務だが妻は金沢で暮らしている。
妻の知り合いの家で事件が起こる。子供が誘拐
されたのだ。誘拐犯は警察に知らせるなと警告し、
家族は夫が警察官である吉敷の妻に相談し、
吉敷が一人で捜査にあたることになった。

犯人は昔の恨みを持っているらしいが、その
恨みは誘拐された子の曽祖母の時代のことらしい
ことがわかってくる。

曾祖母は、かつて芸者の置屋だったが、戦後すぐの
時代に事件にあう。数人の客が芸者遊びのあげく
羽目を外し芸者に狼藉をはたらき、さらに籠城した
のだ。そこへ美男の剣士が現れ悪漢どもを退治した。

その町では、美男の剣士伝説があり、当時は
町の守護神として祀られていたという。剣士伝説は
江戸時代のことだが、なぜ剣士が昭和の時代に
現れたのか?

作品は劇中劇の構成となっており、劇中劇では
江戸時代の様子が描かれる。(島田作品としては
初の時代小説と言っていいだろう。) 平和な村に
やくざ者がやってきて村をわがものにしようとする。
村人らは殺傷される。なすすべもない村人たちに、
正義の味方の浪人がやってきた悪者どもを
一網打尽にする。黒澤明監督の映画のようだ。

さらに劇中劇では、浪人が村を去り、仕官を求めて
城下に行き、そこでいろいろな悶着に出くわす。
さらに平和になったはずの村で再び悪者たちが
現れ村が壊された話を聞き、浪人は再び村へ
向かう・・・。

この伝説の剣士がどのように昭和の剣士に
生まれ変わったのか? これがミステリーと
しての読みどころである。島田作品としては
小ぶりなトリックではあるが、悪くない。

ただ、劇中劇の部分が全体の3分の2くらいを
占めており、長すぎる感はある。もう少し
短くまとめてもよかった気がする。

島田作品の面白さを知っている読者からすれば、
やや物足りない内容だ。だが、虐げられた弱者への
思いという著者の視点がぶれていない点は
流石である。

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