毎年11月開催の大阪韓国映画祭。
今年も申し込んだ上映回の分が当選し、2本見に行ってきました。
「幸福の真髄」
5度の受験でようやく公務員になれたジンス(コンミョン)。
とはいえ、ゴミの不法投棄の犯人さがしに夜中まで、ゴミ置き場で見張ったりと、仕事もラクじゃない。
学生時代の友人と会うと、公務員に納まってもいいのか?と映画監督志望だという奴から言われたりもするが、ジンスはようやく就職できた日々に満足していた。
大学時代の仲間であるジョンス(パク・ソジン)は、女性だけど気の置けない、長い付き合いの友人のひとり。
しょっちゅう一緒に飲みに行ったりする仲だ。
ジンスはずっと彼女が気になっている。
彼女は雑誌の取材で海辺の東海(トンヘ)へ行くことになり、旅行がわりになると思ったのか、ジンスに同行させる。
名所や料理の写真を、せわしなく撮りまくるジョンスの姿は生き生きとしていた。
ある日、大学の先輩が高速道路の事故で亡くなった、と泣きながら連絡してきたジョンス。
そして彼女はそれがきっかけになり、会社を辞めてしばらく長い旅行に出たい、とジンスに告げるのだった。
大きな事件が起こるわけでなく、淡々と主人公の小さな日常をスケッチ風に描いた物語。
ジンスとジョンスのいわゆる「友達以上恋人未満」の縮まりそうで縮まらない、もどかしい距離感が、逆にかえって新鮮だ。
エピソードごとの終わりに、ふんわりしたイラストがさしはさまれるのもなごみます。
「最近、日本に来る韓国映画って、ドンパチものやSFチックな奇想天外ものが多くなって・・」と言ってた知人がいたが、こういうほのぼのした韓国映画もいいものです。
(11月22日、グランフロント大阪・ナレッジシアター)
「トック」
トック(チョン・ジフン)は来年から小学生。山あいの村に、幼い妹・トッキとおじいちゃん(イ・スンジェ)の三人暮らし。
おじいちゃんから「将来は韓国大統領になれ」と言われている。
しかし、祖父と孫だけの暮らしにはワケがあった。
父親は交通事故で急死。
母親はインドネシアから韓国に働きに来ていて結婚したのだが、トックの父親の死後、保険金を勝手に使っていたため、おじいちゃんが「出ていけ!」と激怒、追い出したのだ。
おじいちゃんは、焼き肉屋の鉄板洗いの仕事で生活費を捻出しているが、生活は苦しくてトックとトッキにおもちゃも買ってやれない。
両親がいないことでトックは近所の子どもたちからからかわれたり、意地悪されたりする。
おじいちゃんは自分の体調から、余命がそんなにないと察した。
孫たちに里親を見つけようと奔走するが、一方でトックたちの母親のジャカルタの住所を知り、たずねることに。
ようやくたどり着いたその家に彼女はいなかった。いったんジャカルタに戻ったのち、再び出稼ぎで韓国に渡っていたのだ。
そして彼女には前の結婚で生まれた女の子がいた。その子には重大な病気があり、彼女は手術費用の為、ひそかに夫の保険金を送金していたのだった。
帰国したおじいちゃんは、舞い落ちる雪を見て、「雪を見たのは生まれて初めて!」と大はしゃぎしていた、彼女の笑顔を思い出す。
トックとトッキは里親候補の家で「おためしの同居」をして、高価なおもちゃも買ってもらうが、やはり思うのはおじいちゃんのこと。
口うるさいけど、心やさしいおじいちゃんのところで暮らしたかったのだ。
イ・スンジェは韓国の老人問題や、高齢者同士の恋愛がテーマの「拝啓 愛しています」で主演。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1886746230&owner_id=5348548
今回は、「孫とおじいちゃん」の愛情モノで、子役の名演技と、祖父の愛情いっぱいの孫への思いで、会場のそこかしこで、鼻をすすり上げる音が・・みんな泣かされっぱなしだったに違いない。
ベタな題材だけど、韓国にはこの手のストレートな「祖父母と孫」の交流を描いた映画が多いと思う。
日本だと近年、このような内容の映画って、「ダサすぎて」作られてないような気がするが、儒教道徳が根強く、次の世代を担ってくれる孫たちを後生大事にする、という韓国ならではの映画だ。
母親がインドネシア人、という設定も、現代韓国社会の縮図なのだろう。
舞台は大都市でなく、かなりの田舎だから、東南アジアから嫁いでくる女性が珍しくないのだと思う。
イ・スンジェは、ほんとうに愛情あふれるやさしいおじいちゃん役がぴったりでした。
(11月24日、グランフロント大阪・ナレッジシアター)
※画像左・「幸福の真髄」の1シーン 右・「トック」のポスター
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