束草(ソクチョ・北との国境に近い、韓国北部の海辺の町)で幼馴染だった4人の男たち。
彼らは40年来の友人で、美容外科医ソクホ(チョ・ジヌン)と妻の精神科医でカウンセラーのイェジン(キム・ジス)の新居に、引っ越し祝いで集まることになった。
亭主関白の弁護士のテス(ユ・ヘジン)と貞淑な専業主婦スヒョン(ヨム・ジョンア)、飲食店経営のジュンモ(イ・ソジン)と若い妻で獣医のセギョン(ソン・ハユン)は新婚。教師ヨンベ(ユン・ギョンホ)は恋人を連れてくる予定と聞いていたが一人だった。
久々の再会を喜び、持ち寄った料理を楽しみ、豪華な新居を褒め、会話も弾んでいたのだが・・・
お酒が進むうち、「これからゲームをしましょう。みんなが持ってるスマホのロックを解除してオープンにする。夫婦間に隠し事はないでしょ?」ということになってしまう。
メールもLINEの通知も公開、電話の着信もスピーカーにする、という提案に全員は従うことに。
だって、嫌だ、といえば「どんな隠し事が?」ということになるではないか。
まっさきにあわてたのは弁護士のテス。ヨンベにベランダで
「毎晩10時にメールを写真付きで送ってくる女がいるんだ。お前のスマホは俺と同機種だから、ちょっとの間、取り換えてくれよ!」と懇願。
しかし、「秘め事」は彼だけではなかった。
テーブルに置いたおのおののスマホには次々と着信が。
ジュンモは内緒で投資に手を出していて、その怪しい投資先から電話が。
「カウンセラーって話を聞くだけでラクな仕事」と妻に言っていたソクホは、カウンセリングを受けていたことが判明。
イェジンには豊胸手術の日程についての連絡が。
本人は、豊胸手術の不要性についての講演もやっていたのに。
そしてスヒョンには女友達からの電話。
「引っ越し祝い? ああ、セレブ自慢で嫌な奴って言ってた女のとこ?」
という声がスピーカーで全開になったものだから、イェジンは激怒、スヒョンは「違うわ、これは別の友達のことを言ってるのよ!」と苦しい言い訳。
そしてセギョンには元カレから電話がかかってきて、ジュンモは機嫌を損ねる。
しかしそのジュンモの不倫相手からも着信があってー。
さらにスヒョンには老人ホームからの連絡。
「おふくろを施設にいれるつもりなのか!」とテスは激怒するが、彼が取り換えたヨンべのスマホにはたびたび熱い思いを告げる電話が入り、しかもそれは男性で、
「あなたはゲイだったの!?」とスヒョンは号泣。
こうしてめでたいお祝いの席は大混乱、修羅場と化すのだった。
この映画、オリジナルはイタリア映画「おとなの事情」で、それを韓国で翻案したものだそうだ。
まあ、夫婦間でもスマホは見ないのがマナー、とか言いますよね。
だれにでも秘密はあるし、やましいことを白日の下にさらされるのはごめんだし、でもスマホ全盛時代ってコワイね。
これにプライバシーがなんでも詰め込まれてるし、なんでも入ってくるから、ロック解除してしまうと、パンドラの箱を開けた状態。
映画のほとんどは友人宅の食卓での会話劇だから、むしろ舞台劇とかに向いていそうだ。
物語は、逆にみんなの弱みがさらけ出されることになり、夫婦の間も逆に理解が深まって・・とハッピーエンドを思わせるものだったが、最後にまたひと波乱。
わたしは家族ぐるみの付き合い、というのがイマイチよくわからないというか好きじゃない。友人の配偶者は、自分の友人じゃないもんね。だもんで、この映画のように友人夫婦が何組も集まって、となると、やっぱりどこか妻同士は、しっくりこないんじゃないかと思う。
ヨム・ジョンア演じる主婦は文学サークルに通っていて、映画の中で、詩をそらんじるシーンがいくつもある。
最初は金素月(キム・ソウォル)の詩だった。
わたしは在京中、水道橋の韓国YMCAで開催されていた「韓国近現代の詩」の講座に通っていたので、そのときのテキストを引っ張り出して見たのだが、映画に出てきた詩ではないようだ。
何と言う詩なのだろうか? 気になる〜。公式サイトにも説明はありませんでした。
ほかにも「ソ・ドクチュンの詩」を彼女が暗唱するシーンがあった。この詩人も知らない名前だ。
それにしても韓国人は本当に詩が好きだ。こんなふうにさりげなく、映画の中で詩句が挿入されていたりする。
日本人のわたしが、奈良公園の鹿を見てつい、
「奥山にもみじ踏みわけ鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき」が口をついて出るようなものなのかもしれない。
(11月22日、シネマート心斎橋)
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