<文庫カバーのあらすじより>
異母兄が奈良で消息を絶った。たったの二度しか会ったことがない兄の彼女に誘われて、私は研吾を捜す旅に出る。早春の橿原神宮、藤原京跡、今井、明日香…。旅が進むにつれ、次々と明らかになる事実。それは真実なのか嘘なのか。旅と物語の行き着く先は―。恩田ワールド全開のミステリーロードノベル。
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先日、奈良に「正倉院展」と「興福寺 北円堂・南円堂 国宝特別展」を見に行ったついでに、唐招提寺、薬師寺まで足を延ばしてみた。
古代の息吹を感じる街歩きをしていると、この本が読みたくなって再読。いや、三回目か?
主人公の「私」こと静には亡き父の最初の結婚で生まれた異母兄・研吾がいた。
父方の祖母の葬儀で会った遠い記憶。
研吾は高校の同級生の恋人・優佳利といっしょにたたずんでいた。
そして研吾が突然、トラベルライターの仕事もやめて奈良に行ってしまった、と優佳利から連絡があり、よく知らない彼女と共に、静は東京駅から新幹線、京都から近鉄で奈良へと向かう。
記憶の中の優佳利とは雰囲気が違うことに、どこかしっくりしないものを感じる静。
優佳利は本当は誰なのか?そうして、わざわざなぜ静を呼び出したのだろうか?
「優佳利」は、研吾が本当に愛している人を知りたがっていて、異母妹の静なのではないか?と考えていたのだった。
だが、血がつながっている静にとって、それはありえない。
研吾には長い付き合いの優佳利がいたのだから。
しかし、だいぶ前に研吾と優佳利は別れていた。
研吾の「失踪」の理由は?そして彼が一番愛していた人はいったい誰?
ミステリーに奈良の旅情が加わり、殺人こそ起きないものの、さしずめ現代版・松本清張のようなおもむきもある。
ミステリアスで神秘的な雰囲気の場所として、幾度も明日香村の橘寺が登場。
しかし、わたしにはその手のセンサーがないのか、高松塚古墳の特別公開の時に橘寺にも行ったんだけど、さして感じるものはなかったなあ・・。
田んぼの中にお寺が見えてきたぜ〜っという感じだっただけ(;´∀`)。
恩田陸さん、ずいぶんと奈良を取材したらしく、ほかの神社・仏閣も詳細な描写がつづき、奈良の観光案内書のような様相も。
「蜜蜂と遠雷」のヒットや映画化もあるし、この際、奈良県の観光課は、この本も大々的に観光宣伝に使ったらいいのになあ、と思ってしまうほどです。
ラスト近くで、静が研吾の心情をおもんばかりながら歩くのが白毫と新薬師寺。
ここはまだ行ったことがないのだが、小説を読むとちょっと足を運びたくなる。
また奈良に行く機会はあるので、今度行ってみよう。
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