mixiユーザー(id:11487068)

2019年11月22日08:59

161 view

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1364

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1364

志水辰夫 「新蔵 唐行き」                  

著者は1936年生まれというから、83歳。 
作家デビューは1981年なのでかなり遅い。

僕は志水辰夫のデビュー時からずーっと
作品を読み続けている。

『飢えて狼』『背いて故郷』といったハードボイルド系
冒険小説は傑作だ。当時ほかには類を見ない
作品だったと思う。冒険というよりもハードボイルド
色が強く、派手な立ち回りはないが『行きずりの街』
は男女の恋愛も奥深く優れた作品だった。

今世紀に入り著者は時代小説へと芸域を広げる。
『青に候』をはじめ地味ながら読み応えのある
作品を出し続けている。

前置きが長くなったが、本作品は江戸末期が
舞台。越後の廻船問屋の手代である新蔵が
主人公。問屋の主人に見込まれ新蔵は大坂で
修行し、さらに九州へと足を運ぶ。

新蔵が九州まで足を延ばしたのは理由がある。
問屋の跡取り息子が難破で行方不明となって
いるからだ。息子がどこかに生きていると思い
手がかりを得ようと長崎五島列島まで行く。

五島列島では、さまざまな出会いがあった。
新蔵を助けてくれる人たち、そして怪しげな
若者。わずかな手掛かりを頼りに新蔵は
中国にわたることを決意する。お世話になった
人からは中国に父親がいる若い女性を連れて
いくよう頼まれ、さらに怪しい若者も連れていく
ことに。

なんとかたどりついた中国は英国に脅かされ、
アヘンに疲弊している国だった・・・。

アヘンに侵される清の社会の様子がリアルに
描かれている。時代小説を書くうちに手慣れた
時代考証の確かさに加え、もともと得意とする
冒険の要素がうまく合体した作品に仕上がった。

83歳でこれだけの作品を書けるパワーに
驚く。ぜひこれからも良質の作品を出し続けて
もらいたい。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年11月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

最近の日記