1995年の春、「レオン」が日本で封切られた当時、「殺し屋と少女との純愛の物語」と評判になっていた。だがわたしは、「それってなんかありえないお話だなあ」と思い、見ないまま。
それからしばらくたって、TV放映されたときに見ることとなり、すっかりこの映画のとりこになってしまう。
その後、BSや再度TVでの放映があるたびに見ていると、夫が誕生日のプレゼントに「レオン」のDVDをくれたので、何度もまた見ることに。
だが、劇場でこの映画を見なかったというのは一番の後悔だった。
どこかで上映がないものか・・と長らく思っていたら、TOHOシネマズグループがやっている、「午前10時の映画祭」のラインナップに今秋上映として入っていると知り、前から楽しみにしていたのだ。
物語については、映画ファンの多くはおそらくご存じだろう。
イタリア移民の孤高の殺し屋・レオン(ジャン・レノ)。
彼の住むニューヨークのアパートメントの同じフロアに暮らす、12歳の少女・マチルダ(ナタリー・ポートマン)。
マチルダは複雑な家庭環境で、父親は麻薬売買の、ヤバい仕事をやっていた。
ある日麻薬捜査局が「手入れ」に入り、一家は皆殺しに。
たまたま、買い物に出ていたマチルダは難を逃れた。だが、アパートに戻ってきた彼女は、自分の部屋の前がただならぬ状態なのを見て、すべてを悟る。このままだと、自分も殺される・・・
彼女はとっさに、顔見知りだったレオンの部屋のベルを押す。
レオンも隣室の異変には気づいていた。そして少しの逡巡の末、部屋を開け、あたかも自分の家族かのようにして、マチルダを招き入れて助ける。
麻薬取締官のスタンフィールド(ゲイリー・オールドマン)らによって、マチルダの4歳の弟も殺されていた。
スタンフィールドは表向きは役人だが、ヤクの売人たちと結託して麻薬売買に手を染めているワルだった。
マチルダは、レオンに「あなたの仕事は?」とたずねる。
「殺し屋だ」と答えるレオン。
マチルダは、弟の復讐のため、レオンに、あたしにも人殺しの方法を教えてちょうだい、と懇願するのだった・・・
わたしがこの映画にこうも惹かれてしまうのはなぜだろう?と考える。
レオンとマチルダの、親子でもない、恋人でもない、それなのに激しく堅固な愛情が胸を打ってやまないこと。
冷徹に何人もの人間を殺してきたのに、根底にやさしさのあるレオン、12歳にして老成したような表情を見せながらも、どこか幼さが顔を出すマチルダ。そしてふたりともおそろしく孤独で、その孤独な魂の引力によって、「年の差カップル」が離れられなくなっていくさまが切なすぎること。
そして、「名画」と呼ばれる映画ではそうであるように、「名セリフ」がちりばめられていることも、何度も見返したくなる要因だろう。
最初に見たのはTVの吹き替えだったが、アパートメントの廊下で、父親にぶたれて頬を腫らしたマチルダが、レオンを呼び止めて尋ねるシーンがある。
「大人になっても人生はつらい?」
「つらいさ」
このやりとりが、わたしの心をいわばわしづかみにしてしまった。
その後、元のセリフを知りたくなり、ネットで検索すると、
Mathilda: Is life always this hard, or is it just when you're a kid?
Léon: Always like this.
吹き替えや字幕はどうしても短めの訳にならざるをえない。オリジナルにそって日本語にすれば、
「人生はずっとつらいものなの?それとも子どものときだけ?」
「ずっとつらいものさ」
となる(以下、こちらのサイトを参考にしています。
https://www.eiga-square.jp/title/leon/quotes)。
わたしの心にぐっとくる名セリフが沢山だ。
Mathilda: I don't give a shit about sleeping, Leon. I want love, or death. That's it.
「寝ることなんてどうでもいいの。私が欲しいのは、愛か死よ」
これは、弟への復讐に逸るマチルダに、レオンが「人を殺したら眠れなくなる」とくぎを刺した時のマチルダの返答。
わたしが欲しいのは愛か死。おおっ、そんなセリフ、わたしも言ってみたい(;´∀`)。
Léon: You need some time to grow up a little.
Mathilda: I finished growing up, Léon. I just get older.
Léon: For me it's the opposite. I'm old enough. I need time to grow up.
「君がもう少し大人にならないと」
「もう大人よ。あとは年を取っていくだけ」
「俺は逆だ。年は取ったが、大人にならないといけない」
もう大人だ、あとは歳をとるだけ、というマチルダに対し、年は取ったけど、まだ大人じゃない、というレオンの対照が面白い。
Léon: It's my best friend. Always happy. No questions. And it's like me, you see, no roots.
Mathilda: If you really love it, you should plant it in the middle of a park so that it can have roots.
「最高の友さ。いつも幸福。質問なし。そして俺と同じで、ほら、根がない」
「ほんとに愛してるなら、それを公園の真ん中にでも植えてあげるべきだし、そうすれば根も張るわ」
鉢植えを大事に育てているレオンに対しての、マチルダとのやりとり。
これはラストシーンへの伏線でもある。
ラストで、学校の庭に、レオンがずっと大事に持っていた鉢植えの植物を、マチルダが植えるところは、上記のセリフを思うとなおさら涙が(゚Д゚;)。
不死身のようなレオンは最後に、スタンフィールドに殺されてしまう。
ハリウッド映画なら、ヒーローは見事に脱出して、ハッピーエンドを迎えるのが王道なのに、レオンが死んでしまうなんて! と最初に見たときにわたしは愕然としたのだった。
映画ファンの友人はずっと以前にブログで、
「ラストシーンを見ながら、マチルダの将来が心配になった。みなしごになってしまった女の子の将来が心配、とかじゃなく、12歳にして、命を張って自分を守ってくれる人の存在を知ってしまったマチルダのことが、だ」と書いていたが、わたしもまったく同感だ。そしてそんな存在がもう彼女の前に永遠に現われはしないことも。
大きなスクリーンで見る「レオン」は格別だった。
ようやく、25年目にして、映画館で見る念願がかなった。
わたしの人生で映画ベスト5を選べと言われたら、必ず入れたい映画。
エンディングにスティングの「shape of my heart」が流れると、なおさらじんわりと心に響くのだ。
(11月5日 TOHOシネマズなんば)
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