奈良国立博物館の「正倉院展」を見たあと、そこかしこでのんびりしている鹿たちを見やりながら興福寺へ。
「北円堂」のみの御開帳だったり、あるいはまた「南円堂」のみだったりで、両方が同時公開で堂内の仏像がみんな拝めるのは珍しい。
南円堂は、弘化4年(813年)に藤原冬嗣が建立。何度か建て直され、1996年に平成の大修理が施された。
八角形のお堂には、真ん中に国宝の「不空羂索観音菩薩坐像」がでーんと鎮座、四隅に多聞天、持国天、広目天、増長天の四天王が据えられ、観音菩薩の左右には、法相宗の興隆に貢献したという、学僧たち六名の「木造 法相六祖坐像」が並ぶ。
これらは康慶、その一門作。
それにしてもいずれも木造ながら、どれもどこか重量感があり、金剛仏のように思えてしまうのだ。
四天王像は、どれもアクションがあって、まなこをかっと見開き、大仰な姿がいつ見てもワクワク。
北円堂には去年も行ったけど、ここも南円堂と同様、八角形のお堂。
720年に亡くなった藤原不比等の菩提のために建立。1180年の平重衡による南都焼き討ちで焼失し、1210年に再建された。
こちらもお堂の真ん中に国宝の弥勒如来が座し、左右に大妙相菩薩、法苑林菩薩、四隅に四天王像、そして、わたしの大好きな世親・無著菩薩像である。
こちらは運慶とその一門による作。
北円堂の四天王像はさらに動きがダイナミックで、ユーモラス。なんだかとても人間臭い。
無著・世親菩薩立像は、運慶の代表作ともいえるが、特に無著のおだやかにすべてを包み込んで、慰撫を与えるようなお姿は、何度見に来ても心安らぎます。まさに日本の宝。
もちろん、すべての像が国宝。
ちなみに、北円堂、南円堂の入場券はプレゼント付きで、ちいさなエコバッグと、仏像がプリントされた「ゆかりのふりかけ」がもらえます。
南円堂、北円堂を見終わると、お昼近く。
奈良県庁に出向中の夫と待ち合わせて、東向北商店街にある「ごはんの間」で昼食。
ここはだしのきいた、煮込んだ野菜が実においしい。
天候もよかったし、奈良まで出てきたので、折角なのでここはひとつ、唐招提寺まで足を延ばそうと考えた。
夫から、近鉄奈良駅前から唐招提寺方面へのバスが出ていると言われ、バス停に行くとほどなくして、そのバスが。
乗車し、JR奈良駅を経由しながらバスが進むと、やがて建物が少なくなり、田園地帯になってくる。
17分ぐらいでバスは唐招提寺の真ん前に停車。
入り口の門から、雄大な金堂がもう見えている。
ああ、これが「天平の甍」なのね。
境内はとても広くて、少し駆け足で講堂やら松尾芭蕉の句碑(若葉して御目の雫拭はばや)やら、鑑真和上御廟(レプリカの鑑真像が置かれていて、ホンモノは年に3日だけ開帳するそうだ)を見て回り、さらに奥へ行くと、まるで緑のフェルトを敷き詰めたような、苔が美しい庭園があらわれた。
東山魁夷の障壁画が描かれているという、一番奥の御影堂は、残念ながら修理工事中で入れません。
グーグルマップで確かめると、薬師寺もわりと近くだし、歩いて行ける。
門を出ると、薬師寺への案内板も出ているほどだ。
それで、もうついでに名所のはしごだ! と細い道を薬師寺に向かって歩き出す。
晴天で、日差しも強く、暑いくらい。
古都巡りツアー中らしい、年配の御婦人方のグループが前を歩きながら、
「暑いわぁ。なんかかき氷が食べたくなっちゃった」と話している。
もう10月も終わりだし、かき氷なんてないやろ、と思っていたら、前方に見える観光客向けの食事処の店先には、例の朱文字の「氷」の小さな幟が出ているではないか!まるではかったような店の出現。
ご婦人方は「ほんとうにかき氷があるわ。食べようか?」と大喜びである。
で、ほどなく前方に薬師寺が見えてくる。
唐招提寺と薬師寺ってこんなに近かったんだ。
薬師寺も境内はかなり広く、わたしは修学旅行生にまじって、金堂、大講堂、食堂(じきどう)、西塔とまわり(東塔は2020年4月まで解体修理中)、さらに北にある「玄奘三蔵院伽藍」まで足を延ばしてみた。
もう、朝から国宝のオンパレードで、ありがたい仏像が次々に目の前に現れて、さすがにお腹いっぱい状態になってしまいます(;´∀`)。
玄奘三蔵院伽藍には「大唐西域壁画殿」があって、平山郁夫画伯による、雄大なバーミヤンの石窟遺跡や、パミールの雪を抱く山々とかが描かれている。ただ、ガラス張りのお堂なので、一般の観覧客は、絵のそばまでは近づけません。
薬師寺は赤く塗られた建材がふんだんに使われているせいか、どこか「異国」の香りを感じてしまう。「竜宮づくり」と称されるのも、なるほど、とうべなってしまう。
さすがに終日、「お宝めぐり」で疲労しました。
唐招提寺、薬師寺は、またいつか日を改めて(薬師寺は東塔修理終了後にでも)、のんびりと散策してみたいものです。
ただ、奈良の街を一日歩くうちに、奈良が舞台の恩田陸さんのミステリー「まひるの月を追いかけて」を、また再読したくなりました。
(10月28日)
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