「ジョーカー」と同じ日に見に行ったのに、「ジョーカー」の印象が強烈だったので、こちらの感想が後まわしになってしまった(;´∀`)。
原作は単行本刊行時に読んで、ピアノコンクールに臨むピアノスト群像が生き生きと描けていたのだけど、いかんせん、わたしはクラシックには疎く、小説の中に出てくる曲をちっとも頭の中で鳴らせない。
恩田陸氏の筆致は、文章表現でメロディーを繊細に表現することにかなり成功していたので、クラシックに詳しくない人でも十分楽しめる作品になってはいたけれど、「それぞれの曲をちゃんと知ってたら、もっともっと面白く読めたろうになあ」と残念に思っていた。
それだけに小説の映像化は、まさに文面の中の音を、そのものとして実感できる機会でもある。
3年に一度開かれる「芳ケ江国際ピアノコンクール」。
そこに出場する4人のコンテスタントたちに焦点が当てられる。
栄伝亜夜(松岡茉優)は、かつてピアノの天才少女と激賞されていたが、母の死の直後のコンクール本番でまったく弾けなくなり、そのアクシデントがきっかけで、表舞台から姿を消す。
今回は「天才少女の復活」としての挑戦である。
高島明石(松坂桃李)は、普段は楽器店に勤務しながら、田舎の一軒家でピアノの練習に励む、ピアノ一辺倒ではない、『サラリーマンピアニスト』。
年齢制限ぎりぎりで、コンクールにチャレンジ。「生活者としての音楽」が身上だ。
幼い頃、亜夜といっしょにピアノを習っていたマサル・カルロス(森崎ウィン)。ジュリアード音楽院在学中で、人気も高く、本コンクールの大本命だ。
そして、養蜂家の親の元で育ち、正式の音楽教育は受けていない異能の少年・風間塵(鈴木央士)。でも彼は亡くなったばかりのピアノ界大御所・ホフマンの推薦状を持っていた。
優勝するのは誰なのか、亜夜は果たしてふたたび、かつての輝きを取り戻せるのか?
映画では亜夜のピアノへ向かう恐れとためらいを中心にすえながら、個性豊かなコンテスタントたちの奮闘を描いている。
さすがに原作を2時間に収めるのは無理なので、だいぶ端折ったエピソードが多いけれども、それでも華やかなコンクールの舞台や演奏場面が映像化されているのは、見ながらも楽しかった。何より、「プロコフィエフのピアノコンチェルトの2番ってこういう曲だったのか」と、ようやく納得できました。
松岡茉優は、実年齢よりも少し下の役だが、みずみずしく才気あふれた女の子を演じるにはぴったりだったと思う。
ちなみに演奏シーンの音の部分は、プロのピアニストたちに弾いてもらってるようだが、俳優たちがピアノを弾いている場面それぞれは、なかなかさまになっていた。
出演はほかに、ちょっとタカビーな審査員に斉藤由貴、オーケストラの指揮者が鹿賀丈史、明石の同級生でコンクール撮影をするのがお化粧ひかえめなブルゾンちえみ、そして光石研、平田満ら。クローク係にさりげなく片桐はいりが出ていて、うふっと笑ってしまう。
(10月8日、エキスポシティシネマ)
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