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2019年03月17日08:25

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大阪アジアン映画祭・韓国映画「アワ・ボディ」

チャヨン(チェ・ヒソ)は31歳。
母親から望まれるまま公務員試験を受け続けるが、毎回不合格。
ついに心折れて、試験を受けるのをやめてしまった。
恋人には去られ、母親も冷たい。
そんな失意のチャヨンの前に現れたのは、深夜にランニングをする、ひきしまった体の、美しいヒョンジュだった。

チャヨンは、ヒョンジュの参加しているランニング愛好会に入れてもらう。
走り出してもすぐにバテてしまうが、ヒョンジュは優しくはげましてアドバイスし、チャヨンは走ることがだんだんと楽しくなってくる。
なんだか、変わったわね、と母親も表情が明るくなったチャヨンに驚く。

公務員になるのをあきらめたチャヨンはお金を稼がねばならない。
中学の同級生・ミンジは、マーケティング会社の管理職に就いており、そんなチャヨンを心配して、アルバイトを紹介。

いい大学を出てるのに、入力作業のアルバイト? などと言われながらも、黙々と仕事をこなすチャヨン。
この会社でインターンをし、実績をあげれば、正社員の道も見えてくるー。
そのため深夜におよぶまで、データ分析をやったりする日々だった。

どんなに遅く帰ってもランニングを欠かさないようになったチャヨンは、ヒョンジュとすっかり親密になる。
だが、美人でスタイルのいいヒョンジュなのに、どこか鬱屈があるようだった。
彼女のマンションで泥酔した姿を見て気になるチャヨン。
「どんなセックスがしたいの?」などときわどいことをヒョンジュは聞いてくる。
チャヨンは戸惑いながらも「広い高級ホテルで、贅沢なルームサービスを取って・・」とヒョンジュの意図をはぐらかすように答える。

そして深夜ランニングの途中、チャヨンを振り切るように車道に飛び出したヒョンジュは、クルマにはねられてしまい、命を落とす。

ヒョンジュの突然の死に混乱するチャヨン。
葬儀の後、同じランニング同好会の男性と、捨て鉢のように関係を持ってしまう。
会社へ行く気力もなく、心配して連絡してきたミンジにも投げやりな態度をチャヨンは取り、ミンジは悲し気に出ていく。

それでも、残されたチャヨンは生きて行かねばならない。
ひとり深夜ランニングを続け、インターンの履歴書を書き、役員面接に臨むのだった。
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韓国は、日本以上の学歴社会、競争社会。それに疲弊した若者たちの辛さ、というのをよく聞く。昨今、韓国映画もこの手をテーマにした作品が多いように思う。
一昨年の同じ大阪アジアン映画祭で上映された「カム・トゥゲザー」も、リストラされた父親、違法すれすれのクレジットカード販売で営業成績を上げるのに躍起になる妻、有名大学になんとしても入学したいと、なりふりかまわない娘という家族の姿が描かれていた。
「アワ・ボディ」もまさにそんな社会のただなかで、苦悩する女性が主人公。
公務員試験の倍率は激烈で、何年も試験勉強して受験しても受からず、年を重ねるだけ、という韓国の若者のドキュメンタリーを見たこともある。
チャヨンが悩みながら、ランニングに出会って自分の生き方を見つめなおし、少しずつ前に向かおうとする物語である。

主演のチェ・ヒソさんは、「東柱~空と風と星の詩人」、いま全国で公開中の「金子文子と朴烈」(昨年の大阪アジアン映画祭のオープニング上映作品)に出演しているので、ご存知のかたもいるだろう。
「東柱」では淀みない日本語のセリフだったので、在日の女優さん? と思ったら、韓国人。子供の頃、お父さんの仕事で大阪に数年暮らしていたそうで、達者な日本語はそのときおぼえたのだそうだ。

そのチェ・ヒソさんが、なんと「アワ・ボディ」上映後に登場し、まだ若い女性のハン・ガラム監督とともにミニトークショー。
チェさんは、トークや司会者とのやりとりも、通訳なしのきれいな日本語だ。
ふんわりとしたロングヘアにフェミニンなワンピース。
映画ではさいしょ、ひっつめ髪で眼鏡の、いわば全然色気のない姿だっただけに別人のようだ。
そしてとても可愛らしく、華がある。
女優さんってやっぱきれいだなあ、と思う。

会場からの質問コーナーで、
「親の決めた道から、ランナー仲間のように生きたい、と変わる過程がよく描かれていた」という声に、ハン・がラム監督は、
「まさにそれはわたしの意図するところ。体の変化を通して、生き方の変化を表現したかった」と嬉しそう。

チェ・ヒソさんは「金子文子」の撮影の後では、「チャヨン」は最初とても消極的な女性のように思えたが、演じるうちに強い意志を持つ女性だと思うようになった、と。

ハン・がラム監督は、チャヨンとヒョンジュとの関係について、
チャヨンよりヒョンジュは「先を行っていた」のだが、彼女の死を通して、なぜそんな生き方をヒョンジュが選んだのかと考え、その後はチャヨン自身がひとりで生き方を決めることになる、と語る。
劇中、チャヨンとはひとまわり以上年の離れた中学生の妹が登場、監督は
「チャヨンの妹はまた別の世代。チャヨンとは違う人生を歩んでいくと思う」と解説。

チェ・ヒソさんは、「金子文子と朴烈」が商業映画で初めての主演作なのだという。
「チャレンジができる役に惹かれます」。
「アワ・ボディ」は、オーディションなしで主演依頼の脚本が来た映画だったという。

驚いたのだが、彼女の話では「東柱」の撮影が終わった後、仕事がなくて、自分のプロフィールを売り込みの為、韓国国立映画アカデミーに持って行ったそうだ。
「そのとき、プロフィールの書類を置いたすぐ横にあったのが、ハン・がラム監督のパソコン。すごい偶然ですが」。

ハン監督は国立映画アカデミーの長編映画制作コースとして「アワ・ボディ」を作ったとのこと。
おおぜいの観客の前での一般上映は韓国国内でもまだで、この大阪が初めて、しかもこういう映画祭で上映されるなんて、と監督はとても嬉しそう。
そんな様子はとてもういういしかった。

チェ・ヒソさんは「いろんなジャンル、違うタイプのキャラクターに挑戦していきたい」とこれからの抱負を語ってくれた。
その後、映画祭のパンフレットの購入者には、ハン監督とチェさんのサイン会イベントも。わたしもサイン会に並びましたが、同性でもきれいな女優さんを前にすると、ドキドキしてしまいました。チェさんには、
「『東柱』も『金子文子と朴烈』も見ました。今度は日本の映画にも出てください!」と声を掛けましたが、それを聞いた周りの映画祭関係者も、
「そうですよ! 日本の映画にぜひ出てほしいですね!」。
あれだけ流暢な日本語なので、日本人の役だって違和感はない(「東柱」でも日本人女子学生の役だった)。
彼女の次回作に期待しよう。
(3月15日、ABCホール)
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