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2018年02月08日09:38

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1255

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1255                 

遠田潤子 「アンチェルの蝶」             

この著者の4作目となる「雪の鉄樹」を読み
(No. 1244で紹介)感動し、続けて3作目の
「鳴いて血を吐く」を読み、そして2作目の
本作品にたどりついた。

たぶん7作目が最新作で、僕は未読だが、
『本の雑誌』で昨年度ベスト1に選ばれた。 
つまり今注目の作家である。

1作目はファンタジーで、今日紹介する
2作目が今著者が書き進めている路線の
1作目ということになる。その路線とは、
一言で言えばドロドロの愛憎劇だ。

3作目の「鳴いて血を吐く」は、小さな山村を
舞台に旧家のしがらみの中で登場人物らが
もがき苦しむ話だった。設定自体が昔の
横溝正史作品のようで現代離れしていたし、
なにより登場人物の異様さに僕はついて
いけなかった。

その点、「雪の鉄樹」と同様に本作品では
舞台の設定や登場人物の造形に無理がない。

前置きが長くなったが、あらすじを紹介しよう。
大阪の港町でしょぼい居酒屋を営む藤太が
主人公。ここに中学時代親友だった秋雄が
突然小学生の女の子ほづみを連れてやってきた。
「しばらく子どもを預かってくれ」と言い、秋雄は
立ち去る。未婚で子どもを持ったことのない
藤太は途方にくれるが、ともかくほづみとの
共同生活が始まる。

25年前、藤太と秋雄、それにほづみの母親の
いづみは親友だった。彼らの共通点は、3人の
父親がいずれも仕事そっちのけで遊びまくって
いて子どもの教育をほったらかしていたこと。
藤太の父親にいたっては妻に逃げられ、息子に
対し常に暴力をふるっていた。

そんな父親たちに耐えきれず、さらに彼らのいづみに
対する暴力もあって、秋雄と藤太はある計画を
たて実行に移す。

なんとも痛ましい環境に置かれた3人の子どもたち。
そのトラウマを抱え、その後25年間生きてきたわけ
だが、25年前の出来事と、そのときは分からなかった
事実に直面する。

登場人物らの厳しい環境と、苦難に対し格闘する
彼らに胸を打たれる。絶望から希望は見出せるのか、
迫力たっぷりの書きっぷりは見事だ。

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