☆洋ちゃんの読観聴 No. 1237
佐藤優 「民族問題」
本屋さんに行くと佐藤優の著書がたくさん並べ
られている。ノンフィクション系では他の追随を
許していない。
彼は守備範囲も広い。彼が語れる分野としては
哲学、思想、宗教、歴史、国際関係などであり、
もしどこかの大学に雇用されたら複数の学科で
教鞭をとることができるだろう。
これだけの知識人はそうはいない。池上彰も
売れっ子だが、彼は学者でなくジャーナリストで
あり、いろいろなことを語るけれど物事の上澄みを
すくっているだけ。まあ、ある分野にまったく知識の
ない人向けの解説者としての役割はあるだろうけど。
さて、本書は「民族」とは何かを語っている。いわば
民族の定義の話。なかなか日本人にはなじみのない
テーマなのだが、いろいろな学者の学説を分かりやすく
説明してくれている。新書でわずか220ページという
ボリュームなのだが、コンパクトにまとまっている。
アカデミックな話ではあるが、けっして机上だけの
話に終わらせず、現実に起こっているスコットランド
独立運動やウクライナ問題、さらには沖縄の問題も
民族という観点から自説も加えて読者の理解を促進
している。
今日世界各地で起こっている内戦や紛争のコアの
部分を理解する一つの手がかりとなっている。
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