第1曲「子守唄の中の前奏曲」、なるほど、前奏曲は字義としては本番の前の曲と言う意味だから寝付くまでの時間に子供の相手をしている情景なのだろう。しばらくすれば子供も眠くなってきて、子守唄も実力を発揮する。こんなに穏やかな波だったら寝つきの悪い子もすぐに眠気に誘われそうだ。安心しきって寝ている子供の寝顔が見えてくる。海の生物や船乗りにとってあまりにも穏やかな海はひょっとしたら困るのかもしれないが。
第2曲「拍子木」、ちょっといたずら好きな目覚まし時計というという雰囲気だ。これじゃ目が覚めないと言う人もいるだろうが、ぐずぐずするなと急かしている。このテンポで布団を上げて、顔を洗って、朝食をほお張れば目も覚める。本当はもっとゆっくりとゆとりを持って起きればいいのだが、まずは上出来。遅刻は免れそう。拍子木は舞台や夜警や郷土祭りに使われる。いずれも注目を引き寄せるためだろう。この急テンポのダンス音楽から拍子木は思い浮かばない。
第3曲「即興」、友達と待ち合わせて学校へ向かう。子供のことだからまっすぐには歩かない。水溜りを踏んだり、積んであるブロックに乗ったり、立てかけてある看板の裏を通ってみたり。その時の関心がどこに向かうか、まさに即興だ。友達と仲良く歩く情景が浮かぶ。
第4曲「無窮動」、校庭で遊んでいる光景だろうか。子供と大人の時間感覚はだいぶ違う。小さい子ほど同じことを際限なく繰り返して楽しんでいる。飽きればパッ離れてと次のことに熱中する。しかも片付けはしない。母親も先生も、さぞやてんてこ舞いしていることだろう。
第5曲「バッハへのオマージュ」、どうしてバッハが出てくるのか、良く分からない。静かな音楽だが、秩序正しく任意の音を選べばそこそこの音楽は完成する。日常生活においても規則は大切、きちんと守れば、冒険はなくても平和に過ごせると言うことだろうか。
第6曲「練習曲」、教室の中の騒ぎが聞こえて来る。そして勉強の時間。音楽用語としては練習曲と訳されるが、日常的にはエチュードは勉強や研究を意味する。基礎をしっかり固めるのは楽しくないとしても後でとても役に立つ。それにしても音楽は楽しそうに跳ね回っている。
ところで「波」とはフランス語では水ばかりでなく「音の波」も意味する。そう考えて見れば海の情景を表わす音楽と考えても、心の揺れ動くままに書かれたピアノ曲と見なしても良いのだろう。デュティユーがこんな可愛い作品を書いているのも意外だった。《Henri Dutilleux(1916.1.22 – 2013.5.22):Au gré des ondes》
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