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2016年10月09日10:33

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1162

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1162               

森絵都 「みかづき」                      

学習塾を経営する一家の3代にわたる物語。昭和から
平成へ約40年間にわたる、千葉にある塾の変遷、塾に
関わる人たちと塾経営者との教育をめぐる論争、そして
塾経営者家族の個性を持つ一人ひとりの生き方が紡がれる。

話は昭和36年に始まる。習志野にある小学校に用務員と
して勤める大島吾郎は教員の資格はない。だが、勉強が
苦手な子どもたちに勉強を教えはじめ次第に成果が出て
くる。そのうちの一人が蕗子で、母親はシングルマザーだ。
蕗子の母親、赤坂千明は学習塾を始めようとしており、
吾郎に協力を仰ぐ。それに吾郎は応じ、小さな塾がスタート
する。そして吾郎と千明は結婚する。

塾は勉強のできない子どもたちのための補習塾として、
また文部省の方針に反発する千明の教育論の実現の
場として少しずつ発展していき、スタッフも増やし拡大
していく。また、千明は娘2人を出産し、一家は5人
家族となる。

だが時代は変わっていく。近隣には多くのライバルの
塾が現れ、吾郎と千明の塾も補習から進学へと目的も
変わっていく。千明と吾郎、講師たちとの教育についての
考え方の相違が出てきて、塾を去る講師も出てくる。
また、大人になった3人の娘たちも、それぞれが自らの
意思で道を選び独立したり結婚したりする。しかし、
吾郎と千明の血は争えない、彼らもまた教育の世界に
関わっていく・・・。

時代が変わっていく中で文部省の教育方針も揺らぐ。
そんなブレに抵抗しつつも親御さんたちの願いを
無視するわけにもいかない塾。自分たちの信念との
狭間に悩みながらも子どもたちを愛する教師たち。
そうした教育論とでも言うべき縦糸、そして親・子・
孫3代の家族がくっついたり離れたりの変遷が
横糸となり、見事な小説となった。

「カラフル」「永遠の出口」と並ぶ、著者の代表作の
ひとつになった。映画化されそうな予感がする。

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