だれしもが「拮抗はするけど、結局は残留が離脱を上回るだろう」と予想していたイギリスの国民投票が、まさかの「離脱」の勝利。
それなのに、いざEUから離脱する、ということが現実味を帯びてくると、国民投票をやり直したいとか、離脱に投票するんじゃなかったとか、あげくに「6月23日はあらたな独立記念日だ!」と気勢を上げていたイギリス独立党のファラージ党首など、喧伝していたEUへの高額の拠出金について「金額が間違っていた」と言い出す始末だ。
キャメロンは離脱交渉は先送りしたがり、EU側はさっさと始めろと言い、しばらくは混迷しそうな状況。
おまけにサッカーのユーロ2016で、イングランドがずっと格下のアイスランドに負けたもんだから、サポーターから「国民投票に続いてまた恥をさらしてしまった!」と悪態をつかれるなどさんざんだ。
そもそも議会制民主主義の本家のようなイギリスで、国民投票というのもなんだか不可解な気もした。
国民投票は、民主主義の究極の形なのだろうが、結局、
「誰かのせいでこんなに損をしている」
「何かのせいで迷惑をこうむっている」
といった損得勘定で感情的に判断されがち。「民主主義」の怖い所でもある。
大学時代の恩師(西洋思想史)に一連のEU離脱についてたずねるメールを送ったら、
「民主主義が対立と憎しみをあおる、というのは、その通りだと思います。
民主主義はもともとナショナリズムや排外主義と相性がいいですから。
アリストテレスが民主主義を批判したのは、民主主義が民衆のエゴイズムの発露
になるからでした。
彼は、民主主義と公共性は両立しないと考えていました。
そこが難しいところです。」
という返事をいただいた。
わたしがイギリスに行ったのは20数年前。
それもスペインからの帰りに乗り換えで一泊し、翌日、英国航空の成田行きの出発までの数時間、あわただしくバスでロンドン市内をめぐっただけである。
しかし短い滞在ながら、そのとき強く印象に残ったのは、
「イギリスって多民族国家なんだ」ということだった。
ホテルのボーイさんは中国系、店にはアフリカ系の黒人の店員がいた。
思わず、大学時代受けた「イギリスの植民地経営」のゼミが頭によみがえった。
今後、イギリスがいったいどうなるのか、「やっぱり離脱したいなんて気の迷いでした。またお仲間に入れてくださいよ」とか言い出すのか。
これ以上、世界をひっかきまわして混乱させるのはよしてほしいよ、と極東でイギリスとは何ら関係ない生活を送るおばさんは思うのである。
あ、ケン・ローチ監督あたりに、移民との軋轢をテーマにした映画を作ってほしいですね。
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