宮藤官九郎脚本・監督の「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」、観てまいりました。
最近、なんだか「映画を観る」ということに対して体温が下がり気味で、世評高い「エクス・マキナ」や「デッドプール」を観ても「ふーん、こんなもんか」くらいにしか感じられず、俺、もしかしたら映画神経が摩耗しちゃったんじゃないか?とか思っていたのですが・・・。
杞憂でしたな。これ、面白かったです。大いに楽しめました。
予告編を見て「チャラい高校生が手違いで地獄に落ちるも、奮闘努力の結果、なんとか現世に舞い戻って、好きな女の子と見事にファーストキスを果たす話」だと勝手に思ってたんですが、さにあらず。
意外にシビアな話でしたよ。
まず、一度死んじゃったものは、もう二度と生き返らない。
冒頭、主人公の大助は修学旅行中のバス事故で死んでしまいます。この事実は覆ることはありません。遺体は火葬となり、大助の家族は彼の死を淡々と受け入れます。
大助はもう決して、元の姿で両親や兄弟と会うことはできないのです。本作はお馬鹿ファンタジーのフリをしてはいますが、そういう点ではきっちりけじめをつけています。
では大助は、どうやって現世と繋がろうとするのか? 好きな女の子と「チューする」ためには、何ができるのか?
地獄では週に一度、閻魔様のお裁きがあり、オーディション(?)を受けることで転生の権利を得ることができます。大助はそのチャンスに賭け、なんとか現世に舞い戻ろうとするのですが・・・、その機会はわずか7回。それを越えたら、地獄で鬼として未来永劫、暮らしていかねばなりません。
しかも、転生するといっても人間になれるとは限らないのです! ここでの大助の必死の転生エピソードは爆笑必至。
ここでもうひとつ、シビアな設定が。
地獄での1週間は、現世の10年に相当します。週イチで転生するたびに、地上では10年が経過。つまり、毎週のように転生を繰り返すことで、大助は意中の彼女が老いていく姿を、どうすることもできず見続けるしかないのです。
時は無情に過ぎていく。失われた時間は、もう決して取り戻すことはできない。
この事実は、馬鹿でチャラい高校生の大助もを打ちのめさずにはおきません。
ここに、地獄専属ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」のギタリスト、赤鬼のキラーKが絡んでくるのですが、実は彼と大助には現世で意外な接点が・・・。
ここから先は、未見の方のため、控えておきましょう。とても可笑しく、そして哀しい物語が用意されておりますから。
とてつもなく騒がしくて、くっだらない笑いが満載の本作ですが、根底にあるものは意外にシリアス。
人間、生きててナンボ。
そんな当たり前のことを改めて考え直させてくれる快作です。
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