全3巻からなる18曲のピアノソロのための練習曲集の第1番はタイトルに反してとても単純な発想を極めて精密な計算によって構築した秩序を感じさせる作品だ。もっともそうしないと音楽作品ではなくただの音の塊の掃き溜めになってしまう。
音楽は8分音符3つと5つの組み合わせで進められるが途中で右手のリズムが7つの音符になるため右手と左手の拍がずれて来る。すぐに8と8の関係に戻るが右手は不等間隔で7になる。リズムと同時に拍頭のアクセントもずれて来る。この発作的なずらし現象は左手にも飛び火する。すると右手も一拍減らすので拍数はどんどん少なくなり緊張感を高める。後半になると逆に拍数は増えていき、テンポも速くなる。左手の終結部は音符が24個繋がった塊と化して両手も同化してタイミングで最高音のCで結ぶ。この辺も秩序のある配慮としか表現のしようがない。
他に目立つところは左手が黒鍵に、右手は白鍵に限定されていること。それとアクセントのあるなしによる強弱の差を大きく対比させること。要するにずれ具合を楽しめと言う作品だ。各声部の音のパターンは規則的できれいだ。文字を読むと頭の中がずれて来るかもしれないが、実際に音を聴くと不快な響きはないので単純に面白く聴ける。ふと思ったが、この曲を弾けるピアニストはたくさんいるが、ここまで要求される音楽教育は妥当なのかと思わされた。《Ligeti György(1923.5.28 – 2006.6.12):Désordre, Études pour piano no. 1》
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