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2016年05月21日17:11

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1137

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1137                

トム・ボウマン 「ドライ・ボーンズ」              

アメリカの新人ミステリー作家のデビュー作。 

ミステリーは、大きくジャンル分けすると、謎解きの
本格派と、ハードボイルドないし冒険派とに分かれる。

まず英国において本格ミステリーが生まれ発展し、
アメリカにおいてハードボイルドが生まれ発展した。

前者の場合は、犯人探しと犯行のトリックが読み
ごたえのポイントとなるし、一方の後者では主人公の
正義感や勇気といったことが必須と言えるだろう。

アメリカのハードボイルド小説は、主として探偵や
刑事が主人公となり、このためロサンゼルスや
ニューヨーク、ボストンなどの都会が舞台となる。

ところが、ここ20年くらいだろうか、アメリカの
ハードボイルド的小説において田舎が舞台となる
作品が増えている。たとえば、ここで僕が紹介してきた
クルーガーという作家のオコーナー保安官シリーズは
ミネソタ州の人口の少ない町だ。

前置きが長くなったが、本作品もペンシルバニア州の
山間部の郡が舞台で、主人公は警察官である。

山と森ばかりの田舎で、若い男の死体が発見される。
だが死体が誰なのか分からない。その捜査を主人公
らが初めてまもなく、今度は主人公の部下の警官が
殺されてします。いったい誰が、何のために?

この地は古くからアイルランド系の人たちが入植した
ところ。いくつかの家族は数世代にわたって暮らして
いるのだが、実はいろいろ因縁があり複雑な人間
模様となっている。

本書の読みどころは、数世代にわたる人たちの
人間関係と、主人公のこれまでの生きざまなの
だろう。そして色取りを添えるのは山々に囲まれた
土地の自然だ。

少し物足りないと僕は感じるのは、主人公の
仕事への取組みで、この地域の中で自分が
どのような立ち位置で生きていくのかイマイチ
見えてこない。この手の小説でよくあるケースと
しては、困難な仕事をこなしているうちに主人公が
成長し生きがいを見出すというものだが、本書では
そこまで到達していないと僕は思う。

加えて、登場人物のキャラづけが必ずしも十分で
ない。その登場人物も少なくはなく、表紙の裏に
掲示されているリストはまったく不十分であり、
この点は出版社に改善を要求したい。


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