第1楽章、真っ赤に燃える空の彼方に暮れ行く陽を眺めている雰囲気で始まる。弦楽の中に管楽器が不穏な気配を漂わせている。古い日本情緒を、平安時代から近代までのダイジェストを展開してまた平安時代に戻るような幻影を見る。緩やかな旋律には怨念の時代の異様な香りがするが、行進曲風な所は富国強兵の悪夢が広がる。ロマン派後期の雄大な音楽の中のどこをとっても山椒のような日本的な薬味が効いている。
第2楽章、沖縄風の旋律がファゴットから始まり次々に他の管楽器に受け渡されていく。これも夜の情景を連想させる。中間部では熱気が高まって祭りのような賑わいになる。昼間の熱風が去って夕方から夜にかけての時間に漲る若者の生気を感じて心地好い。きりっと締まったエンディングも爽やかだ。長大なクレッシェンドと繰り返しと言う意味ではボレロに似ている構成を持つようだ。
第3楽章、主題の提示と8つの変奏曲、最後はフーガで締めくくるという編成になっている。主題は「紀元節」という歌の旋律を用いたと言う。変奏曲の腕が冴えているのかもしれないが、旋律そのものは明るくて好ましい。明るく堂々と曲を閉じる。
皇紀2600年奉祝曲としてかなり難しい注文を付きの委嘱された作品。単なる御用達音楽に留まらず好感の持てる交響曲に仕上がっている。3楽章形式になっているのはちょっとした反発かとも思うが考えすぎだろうか。橋本國彦は1949年5月6日に胃癌により44歳で亡くなった。《Kunihiho Hashimoto:Symphony no. 1 in D major》
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