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2015年12月22日14:06

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チュルリョーニス

先週、映画「杉原千畝」を見たので、リトアニアつながりで、ひさかたぶりにチュルリョーニスの交響曲のCDを聴いてみた。演奏はリトアニア国立交響楽団である。

チュルリョーニス、といっても知名度は低いだろう。1875年生まれのリトアニア人だ。
わたしがその名を知ったのは、ソ連からバルト三国が独立したのち、東京のセゾン美術館で、チュルリョーニスの絵の展覧会が開かれている、という日経新聞の記事を読んだときだった。
当時は福岡在住だったので、さすがにその展覧会は行けなかったが、幻想的ですごく不思議なタッチの絵はとても魅力的で、何より、彼は画家としてだけでなく、作曲家としてもリトアニアでは著名だと知って驚いた。絵画と音楽の両方で才能を発揮した芸術家は珍しいのではないか。
おりしも彼のCDが発売されているというので、さっそく買いにいったのを覚えている。

数年前、東京で友人数人と雑談をしていた時、毎年のように海外に行くYさんが「今度の旅行先はリトアニアを考えてるんだけど」と言う。
わたしが「リトアニアといえば、杉原領事の『命のヴィザ』が有名だし、琥珀の特産地で・・」と言うと、Yさんは「昔、チュルリョーニスっていうリトアニア人画家の展覧会を見に行ったことがあってね、ちょっと興味がある」と言うではないか。
「あ、知ってる。見に行きたいけど、東京までは行けないなあ、ってそのとき思ったなあ。それで彼のCDを買ったんだけど」と答えるとYさんは驚いて、
「えっ! まさかチュルリョーニスのCDを持ってる人がいるなんて! わたしも聴いてみたい。貸してもらえる?」。そこでしばしリトアニアがらみで話が盛り上がるという、ちょっとマニアックな場となった。

CD収録の交響詩「森の中で」「海」は、どちらもゆったりした曲調の、わたしなどどこか「ほのぼの」とした感じを受ける。これがお国柄、というべきものなのか。

ライナーノーツには、バルト独立、ソ連崩壊というあの激動の時代ならではの解説文が興味深い。
チュルリョーニス研究家の宮山幸久氏はリトアニアに行った際、ビリニュス音楽院教授で、チュルリョーニス研究の第一人者のランズベルギス氏に会って親交を深めた。
ところがその後、東欧の共産党政権が倒れる中、ソ連でもバルト三国の激しい独立運動が起こった。
リトアニアではそのリーダーとして「ランズベルギス」という人物が現れ、宮山氏は当初「同姓同名だな」と思っていたらしいが、TVニュースでまぎれもないあのランズベルギス氏であると知り、驚愕したという。
まさか、音楽家が政治運動の先頭に立つとは・・という意外な思いがあったのだろう。
そのランズベルギス氏が、のちのリトアニア最高会議議長である。

わたしは大学ではドイツ近現代史を専攻したが、個人的には「大国にはさまれて悲哀を味わう小国の歴史」が好きである。いわゆる判官びいきか。朝鮮半島史に昔から興味があるのも、そんなところからかもしれない。
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