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2015年10月18日12:15

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関西スクエア クロストーク「琉球独立を問う」

朝日新聞社主催、政治学者の白井聡さんをホストにしたトークイベント。
今回のゲストは「琉球独立論」の著書のある松島泰勝氏(沖縄県石垣島出身、龍谷大学教授)。
おりしも数日前に、沖縄県の翁長知事が、「辺野古埋め立て承認取り消し」を出したばかり。
白井氏は「琉球独立とはいったいどんなもので、日本にはどんな意味があるのか考えたい」と提示し、対論がはじまりました。以下、撮影、録音は不可だったので、例によって、わたしが当日取ったメモをもとに書き起こしています。聞き洩らしや、前後のお話がうまくつながらない部分もありますが、ご容赦ください。

<白井>
私は1996年に大学に入ったのですが、入学前年の95年に沖縄で「少女暴行事件」が起き、反基地の大きな運動が広がりました。ちょうどそのきっかけもあって、その頃沖縄研究の若手が増えたと思います。
沖縄の苦難はアタマでは理解できたが、本当に認識できていたかはあやしい。
本土の人間の沖縄に対する無関心は、ほとんど犯罪にひとしいと思う。
私はウエブのコラムを書いていますが、沖縄をテーマにすると、アクセス数がかなり減ります。
沖縄について、本土の人間の態度は大きく分けて3つです。
1.無関心 2.気の毒だ、申し訳ない 3.基地で潤っているんだから文句を言うな、という差別的態度。
しかし2はしょせん「他人」に対する感情でしかありません。沖縄問題は日本の社会問題の縮図であり、いろんなことを沖縄に押し付けている。沖縄出身者の松島さんには、本土の人間は、どう映っているのでしょうか。

<松島>
ハイサイ!・・・・・(と、始まり、たぶん「はじめましてわたしは松島泰勝と申します」といった内容をウチナーグチでご挨拶)。
本土の大学に入学すると、訛りがあったり、私が色黒だったりで「どこの国の人?」とよく言われたりしましたよ。
琉球ー私は沖縄ではなく、琉球、と呼ばせてもらいますがー140万人の人口、いわば日本の1%ぐらいしかありません。しかしいろんな負担を背負っている。
いま、翁長さんが、命を懸けて琉球のために頑張っていると思います。

<白井>
翁長知事のブレなさを感じますね。アメリカに直接話を持って行くことが今までと違う。日本政府に言っても、もはや話になりませんから。
本土メディアと沖縄メディアを見ても別の国のようですね。本土の新聞は知事の訪米を「効果がなかった」、沖縄の新聞は「一定の成果があった」と評しています。

<松島>
ワシントンDCに沖縄事務所を置いたんですよ。ハワイで近くウチナーンチュ大会が開かれます。辺野古問題で苦しんでいる琉球人を助けてもらおう、という意図もあって、翁長知事はハワイも訪問しています。州知事は沖縄にルーツのある二世です。

<白井>
沖縄で起きていることは人種差別である、という認識です。アメリカの雑誌「フォーブス」には、翁長知事は「日本で最も勇気のある男」と紹介されました。彼は安倍政権からすると、一番イヤなことをやっているわけです。
アメリカが「そんなに沖縄から米軍が嫌がられているんなら、基地は沖縄にいらないよ」と言い出すのを恐れている。

<松島>
琉球が国連を利用したのは1962年、立法府が国連で、米国支配を批判したことがあります。
翁長発言は、「琉球人の自己決定権が冒されている」と言ったことが重要です。

<白井>
翁長知事の誕生で“オール沖縄”で固まりました。
前知事の仲井真さんは米国従属から抜けられない「永続敗戦レジーム」となってしまった。
このレジームと闘ったのが、沖縄知事選。総選挙でも選挙区では自民党候補が負けます。
しかし東京の政府は、辺野古に移転基地を作ると決めたら作る、というスタンス。
東京に言ってもしょうがない、いわば県レベルで外交をやっているようなものです。
民衆レベルで、独立するしかない、という動きはありますか?

<松島>
「独立論」は1870年代からありますよ。
明治維新の後、むりやり琉球国をつぶされ、清に亡命していた琉球国の要人は、独立を画策しました。
2009年、鳩山政権時代、彼が知事会でどこか基地を引き受けてください、と言ったら手を挙げたのは大阪の橋下知事のみ。
でも視察に行ったら、関空ではなく、いや、神戸空港があいてます、と言われたとか(笑)。
県外移設は幻となり、逆に政府はオスプレイを配備。本土の人間は無関心、あとは独立するしかない、と思ってもおかしくない。琉球処分自体、国際法違反ですから。

<白井>
琉球の帰属問題が決着したのは日清戦争のときです。
清は「琉球はウチの保護国。勝手に日本が併合するのはけしからん」という見解ですが、清の敗戦で帰属が確定し、台湾も併合されました。
第二次大戦中、蒋介石は沖縄をどうするか? とアメリカから打診されて、国共内戦でそれどころじゃないという態度だったようです。
歴史的に見ても東京の政府が沖縄を支配するのは、まったく自明のことではないのです。
よく「居酒屋独立論」と言われたりします。独立にあたって現実味がなく「けっきょくは独立できるワケがないよね」と居酒屋で自嘲的に語られる言説です。
しかし、松島さんはパラオなどの島嶼経済の研究もされていますよね。パラオは2万人でも独立国家。規模という観点からだと可能です。日本人はなかなか気づきません。独立してやっていけるワケがない、という思い込みがあるのでは。

<松島>
グアムに住んだことがありますが、あそこは米属領、市民権はあるが、大統領は選べない。いわば植民地で米軍基地もある。
パラオは人口2万人で16も州があります。アメリカの信託統治領でしたが、独立に当たってアメリカの許可がいるわけではない。人口数ではなく、独立したい、という意志が大事。
基地がなくなったら困るのでは、と言うけど逆で、米軍基地を押し付けるために、沖縄県に経済的に自立できない構図を作っているのでは? と思います。

<白井>
基地がむしろ経済発展の阻害要因となっています。

<松島>
日本復帰前、基地で働く人は6万4000人でした。今では9000人に減っています。基地経済は県の5%。逆に、返還された広大な基地は再開発で、数10倍の経済効果が上がっています。
基地依存は過去の話で、基地なしで食っていけるのか、という問いはナンセンスです。

<白井>
柄谷行人氏が沖縄独立論の本の書評でいきなり「なぜ、沖縄が独立しないのかわからない」と書いていて、あの人はほんとうに左翼だなと・・(笑)。
母親が沖縄出身で、沖縄問題にも発言している佐藤優さんなんかは、ソ連末期のバルト三国の独立を見ています。で、現地にいるとこういうことは進む時には一気に進むものなのだ、と実感したそうです。
彼は沖縄差別を告発していますが、「本土と沖縄とひとつの国であってほしい」というのが本心なんですよ。独立せざるを得ない状況だから、そうならないよう呼びかけをしている。
私は独立については「沖縄の人が決めることだが、実際に独立するなら応援したい」という気持ちです。
そして沖縄の独立は本土の人間にとって大きな意味を持ちます。

第一に、近代国家は社会契約に基づくもの、それを日本人は確認できるということ。
対等なもの同士の契約であるべきで、一部地域のみ不利益を押し付けて、長年放置されるべきでない。
日本から沖縄が離脱してもいたしかたない、ということを理解すべきです。沖縄を失うことで、近代国家の原則はどういうことか、ということを日本人は勉強できる。

第二に、ある種のプライドに関することですが、いま日本では違憲状態の安保法制、あれだけ大規模な被害を出したにもかかわらず再稼働になった原発のことなど、これだけひどい政府なのに国民は唯々諾々と従っている。
原発の立地自治体では再稼働を望んでるんですよ。原発はそこでは争点にもなっていない。
迷惑施設、つまり必要と思われているけれど自分ちの近くには置かないでくれ、と思うものを押し付けられる、引き受けさせられるというのは明らかな差別です。
だが、いままで福島などでは、迷惑施設を抱きしめることで乗り越えている構図があります。
差別されているのを認めたくない→これをプライドに転化するわけです。原発を引き受けていることで日本経済に貢献している、原発が在って共存していることが地域のプライド、それによって差別を乗り越えようとしてきた。「原子力 明るい未来のエネルギー」というスローガンを掲げていた町もありました。
だが沖縄では基地との共存を肯定するスローガンは見当たりません。共存させられているけれど、嫌なものは嫌だ、と言う。こういうメンタルな構造の違いがあります。
沖縄で、奴隷でいることは嫌だ、というのを突き付けられた時、本土の日本人はどう思うのか?

<松島>
政府は基地とリンクして振興予算を持ってきました。
しかし辺野古は普天間の代替施設ではない。200年もつ、と言われています。ヘリポートも弾薬庫もできる。半永久的に基地を固定化しようとしています。
基地との共存はありえません。

・・・・ここでいったん休憩に入り、後半は、聴衆から寄せられた質問用紙のいくつかに答える形となります(この項つづく)



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