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2014年12月29日16:49

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1028

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1028             

テリー・ヘイズ 「ピルグリム」1・2・3

僕はスパイ小説が大好きだ。スパイ小説の巨匠と
言えば、フォーサイス、ラドラム、ル・カレといった
作家が挙げられるが、こうした人たちに匹敵する
かのような大型新人が現れた。

テリー・ヘイズは、元々はジャーナリストだったが、
映画の脚本家に転じ、「マッドマックス」シリーズや
「フロム・ヘル」などの作品を送り出している。
小説家としては本作品がデビューとなるが、
脚本家の経験があるためか新人という気がまるで
しない。

さてスパイ小説の話に戻ると、先ほど名前を挙げた
人たちの作品は東西の冷戦時代を描いていた。
冷戦が終わりスパイの出番がなくなり、この結果
スパイ小説や映画が少なくなった。

だが、どっこい世界の事情はスパイがなくなることを
許さない。イスラム過激派の勃興である。9・11
以降の世界は、イスラム過激派の暴走をどう抑えるかが
一つの大きなテーマである。そして、この題材を
作家が見逃すはずがないのである。

本作品の主人公は、アメリカのとびっきり優秀な
諜報員(暗号名ピルグリム)と、とんでもない計画を
実行しようとするテロリスト(暗号名サラセン)である。

主としてトルコを中心にサウジ、シリア、ドイツ、
アメリカなど多くの国々を登場人物たちは動きまわる。

人類破滅にもなりそうなサラセンの計画と、それを
防ごうとするピルグラム、彼を後方支援する米国の
諜報機関。この必至の攻防は読み応えがある。

また、ニューヨークで起こった謎の事件を捜査する
ことを隠れ蓑としてピルグリムはトルコ入りするが、
この事件も一筋縄のことではない。

主人公に協力するニューヨークの刑事、コンピュータの
スペシャリスト、主人公の上司ら、それぞれのキャラも
立っている。

イスラムのテロリスト=極悪人といった単純な図式で
ないことが好感を持てる。それに、なんとも言えない
リリシズムをこの作家は持っていることにも注目したい。

文庫本3巻は、読む前は長いなあと思ったが、各章が
数ページと短く、また無駄な記述はないので、実に
読みやすく、あっというまに読んでしまった。

スパイ小説大好きな人は絶対見逃してはならない
傑作だ。

今月初めに僕は自分の今年のベストを発表して
しまっているが、再考が許されるなら、本作品こそ
今年の海外翻訳小説のベストにしたい。


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