〜時は江戸時代。ある雪の降る夜、木挽町の芝居小屋「森田座」のすぐ近くで、美しい若衆・菊之助(長尾謙杜)が父の仇討ちを見事に成し遂げた。その事件は多くの人々に目撃され、美談として語られることになる。1年半後、菊之助の縁者だという侍・総一郎(柄本佑)が、仇討ちの顛末を知りたいと森田座を訪れる。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞くなかで徐々に事実が明らかになり、やがて仇討ちの裏に隠された「秘密」が浮かび上がる〜<映画.comより>
永井紗耶子の原作は、直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞。
これがとてもよかったので、映画を観る前に読んでしまったことを後悔しましたが…
映画も面白かった!
年内のベスト5に早くも決定。
「国宝」の時にも思いましたが、原作の微妙なニュアンスやデティルは削減されてしまうものの、映画のあの映像美の凄さには敵わない。
雪の中の紅い振袖、それを纏った凛々しい若衆、激しい斬り合いに飛び散る鮮血。
ことに私は時代劇はそれ程観ないので、江戸時代の芝居小屋(歌舞伎座)やその裏方、江戸の下町や食べ物屋の様子などがよくわかって嬉しい。
歌舞伎の口上、浄瑠璃の音楽などももれなく付随して来ます。
そして何より、ストーリーの見せ方、脚本が面白い。
冒頭、芝居小屋での演目は敵討ちの代名詞・仮名手本忠臣蔵、それがはねた後に、
「我こそは伊能清左衛門が一子、菊之助。その方、作兵衛こそ我が父の仇、いざ尋常に勝負」というかけ声と共に、野次馬を前に雪の中で仇討ちが繰り広げられる。
自分が小さい頃から仕えてくれた実直な下男、作兵衛(北村一輝)の首を、どうして菊之助が打ち取らなければならないのか。
「お前さんにとって武士とは何だい」と筋書の金治(渡辺謙)に訊かれて
「人としての道を過つことなく、おもねらず、義を貫くことだと思います」と答えるくらい、真っ直ぐな若武者であった菊之助が。
当時、場末の悪所と呼ばれていた芝居小屋に流れ着いた、社会の底辺とも言うべき面々が、どのように人情の深さで菊之助を包み込み、その背中を押して行ったか。
狂言回しの総一郎は、原作では主体としては出て来ません。
彼に追及されて芝居小屋の面々が答えるというスタイルで、章毎に語り手が変わって行くのです。
最後の、菊之助が立派な武士となってからの芝居小屋への立ち寄り、あれも原作にはなく、映画ならではのサービス。
観客を喜ばせ、後味をよくすることの、何と上手いことか。
エンドロールの、椎名林檎の曲は私には頂けませんでしたが…
「木挽町のあだ討ち」公式 HP
https://www.kobikicho-movie.jp/
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