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2015年06月12日21:04

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リゲティ:レクイエム

第1曲「入祭唱」、身震いするようなとてつもなく低いざわめきで開始される。チューバ、コントラバス、バスクラリネットなどの低音楽器が背後でロングトーンを鳴らすが合唱と渾然一体化している。徐々に音の輪郭がはっきりして来る。後半に入るとソロ歌手も参入するが魂の呻きのような雰囲気は変わらない。第2曲「キリエ」、恐ろしい音楽だ。永遠の彼方から届く絶叫だ。殆ど油脂で塗り固めた音塊だが譜面上はびっしり音符が詰まっていて細かい指示がそれぞれに与えられている。決して無秩序に音を埋めてはいけない。それを聴きとめることはできないがそれぞれのパートに意味がある。「主よ、憐れみたまえ」と言う歌詞で始まるのが「キリエ」だが、ここでは憐れみよりも神の計画の中で示さる救済を表出しているのかもしれない。それは人間の能力を超え、起点Aと帰結Bを解く知恵は人間にはない。Kirieは「主」を意味する。英語で教会を意味するchurchは中世英語のciriceを経由してkiriosに由来する。第3曲「裁きの日」、金管楽器の絶叫と打楽器の衝撃音が随所に入る緊張感の漂う劇的な音楽。ソプラノとメゾのふたりのソリストの歌唱がすごい。不可解な音程の跳躍、強弱の切り替え、音色の使い分け、殆ど人間業ではない。リゲティは音量で圧倒することを避け直視できない絶対的な主権のある御座の栄光を描いているようだ。裁きの日と言うと恐ろしさが強調されるが、キリストが取りなす者が赦され天国に迎え入れられる日でもある。第4曲「涙の日」、柔らかい持続音の靄の中から歌が生まれる。二重唱のハーモニーが神秘的に響く。悲しみに苛まれているような歌が感情を出さずに歌われ遥か遠くの次元に消えていく。合唱は参加していない。通常のレクイエムとは全く違う構成を取っている。合唱は24声部に分かれている。合唱陣は各自音叉を持ち耳元で音程を確認するとまで言われているほど音程の動きは尋常ではない。一歩間違えればただの雑音だが、リゲティは最後まで緊張感を持たせて永遠の深淵を見せてくれた。《György Ligeti(1923.5.28 – 2006.6.12):Requiem, szopránra, mezzoszopránra, húsz szólamú vegyeskórusra és zenekarra》




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