日本では学校のチャイムでお馴染みだが、本家本元はロンドンのビッグベンの鐘の音。鐘の音がロンドンの夕暮れを覆う様子がオーボエによって描かれる。ピチカートが時を告げ、帰宅前の人々のせわしさが感じられる。続いてフルオーケストラのやかましい喧騒。交通渋滞だろうか。ピチカートが急ぎ足で家へ向かう人々が映し出す。
ティンパニの低音に支えられた怪しい雰囲気が広がる。夜も深まり、街は静まりつつあるようだ。管楽器の活躍するそれなりに美しい情景音楽になっている。パブで一杯引っ掛けながらの仲間内の話題が弾む。弦楽器の忙しない動きが尽きない話題の展開をユーモラスに描く。エスカレートして羽目を外すのも仕方ないところ。
とは言っても翌日も休みではない。陽気に別れを告げてそれぞれ家路につく。クラリネットとオーボエがやけに寂しさを強調する。再び鐘が静かになり、ウェストミンスター寺院の影が月夜に揺れている。
副題はウェストミンスターの鐘による変奏幻想曲。通称ビッグベン変奏曲。ただしビッグベン自体も通称で正式名称ではない。ベンは人の名、ベンジャミンのベン。建設当時の責任を負った議員の名を取ったとも言われるが、あくまで通説で記録は残っていない。
トッホは1887年12月7日生まれのオーストリアの作曲家。個人的には小品に魅力を感じるが、交響曲と弦楽四重奏曲に特質が発揮されていると言えるだろう。シューマン的な雰囲気と言う人もいるが、古典から前衛までいろいろ模索したようだ。《Ernst Toch:Big Ben, Variation fantasy on the Westminster chimes, op. 62》
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