第1曲「前奏曲」、弦楽とサックスの音楽は薄暗くわびしい。貧しい人々の住む地域の様子を俯瞰しているようだ。
第2曲「間奏曲」、管楽器とピアノのための似粋の良い曲だ。買い物に出たり、足を止めておしゃべりしたり、人々が行き交う様子のようだ。ここでもサックスが活躍する。
第3曲「第1変奏」、冒頭と同じような雰囲気が重く漂っている。意気消沈した人々の表情を見ているようで、哀れな感じがする。
第4曲「行進曲」、街を我が物顔で行進する不良たちの一群。息は荒いが快調なテンポが気持ちよい。このまま祭りの情景に使っても問題なさそうだ。
第5曲「第2変奏」、計画通りに物事が進まずしょげている。肩を落として帰る道が夕陽を受けて寂しそうだ。
第6曲「英雄的アンダンテ」、打楽器の連打で開始。管楽器がかぶる。前半は死にたい気分に浸っているが後半は勝利感に溢れている。空元気かもしれない。
第7曲「第3変奏」、雰囲気的にはバッハのオルガン曲だ。暗いけれど格別な美しさがある。
第8曲「終曲」、人生は悲しい。それでも気持は楽しく生きていきたい。見えない希望を手探りしながらでも。音楽は唐突に明日を描かずに消えてしまう。
1933年のフランス映画「巷の子」に使われた音楽をまとめた曲のようだ。不良仲間のボスのような主人公が少女誘拐の計画に乗ったが失敗し、警官に追われてセーヌの川岸で夜を明かす。そこで早朝から額に汗して働く労働者たちの姿を見て、そんな世界があることに感動し、自分の生き方が間違っていると気付く。家にも戻れず、結局逮捕された。裁判が開かれ、母親が息子を犯罪者にしてしまった罪は自分にあるのでその罰を受ける。息子を実刑にしないでくれと懇願した。主人公は過去の悪行のすべてを悔い改め、真っ当な人生を送る決意を持って牢から帰還した。
以上が物語の大筋だが、純器楽作品としても価値がありそうだ。ブレヒトと共に活動し、映画や舞台音楽をたくさん書いたようだがアイスラーの詳細な作品リストは作られていないようだ。新ウィーン楽派の3人の作曲家の弟子でもあったが、政治上の理由もあって決別し、音楽的にはヴァイルに近いものを感じる。ユダヤ人であったためにドイツからアメリカに亡命し、共産主義の熱心な支持者としてアメリカからも追放され、戦後東ドイツに安住の住まいを獲得した。《Hanns Eisler(1898.7.6 – 1962.9.6):Suite für Orchester n.5 “Dans la rue”, op.34》
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