第1曲「ワルツ」ホテルのロビーで、何か起こりそうな予感がする短い序奏で始まりすぐにワルツに転じる。いわゆるひとめ惚れ、相手を意識するが声もかけられずに目を泳がす。視線が合うと気持ちが高鳴り、ぴたっと身を寄せ公衆の面前で鼻高々と大胆に踊る夢想に浸りながら心はひとりワルツに酔いしれている。第2曲「スコットランド舞曲」3階の廊下で、「おや、同じ階にお泊りとは偶然にしても嬉しいですね」と話すきっかけができてにっこり。実はフロントで同じ階の部屋を頼んだ結果なのだが。わざとらしさが木管楽器の対話の中に滲んだスケルツォっぽく。第3曲「パ・ドゥ・ドゥ」、ダンス・ホールの片隅で、もの悲しげな音楽はどうしたわけだろう。ダンスに誘い出すことに成功、ひとしきり踊った後に悩み事を打ち明けられているのだろうか。木管楽器の対話が続いた後に総奏になるとちょっと明るくなったようだ。第4曲「ツー・ステップ」パームコートでお茶を、パリのカフェでの情景を思い浮かべるとぴったりする。道行く人の流れをそれとなく眺めて時間が経過する。音楽的にも一休みの雰囲気だ。第5曲「ためらい--タンゴ」ベッドルームで、ためらいをファゴットの音色で表していると思ったがその後の展開は意外に大胆だ。短時間でベッドルームにたどり着いたのだからシャイとは言えない。急速に情熱的な音楽に転換してかくれんぼでも始めたのかもしれない。第6曲「ギャロップ」翌日の昼下がり浜辺にて、どうやら意気投合し無事に朝を迎えられたようだ。できないことはひとつもないと言う気分を歌っている。終曲で海が登場し、なるほど避暑地のハッピーエンドなんだと気付いた。一足飛びにプロポーズ。喜びに弾むようなエンディングに付け加えることはない。バーバーが親しい友人たちと楽しむためのピアノ連弾用の作品をオーケストラ版バレエ組曲としてまとめた作品のようだ。細かい筋書きはないが、各曲のタイトルと情景はバーバー自身の考案による。《Samuel Barber(1910.3.9 – 1981.1.23):Souvenirs, Ballet suite, op.28》
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