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2018年03月31日11:37

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映画「ウィンストン・チャーチル~ヒトラーから世界を救った男」

「We shall fight! We shall never surrender!」

1940年5月、第二次世界大戦でナチスはヨーロッパで猛威を振るい、ベルギー、オランダ、ノルウェーに侵攻。フランスも陥落間近となっていた。
イギリスではチェンバレン(ロナルド・ピックアップ)に代わり、ウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)が首相に就任。
国民からの人気はあるものの、海軍大臣時の度重なる失策で、政界からは「嫌われ者」で通っていた。
朝っぱらから酒と葉巻をたしなみ、尊大で、新しい秘書のレイトン(リリー・ジェームズ)も叱りつけられ、びびって泣いてしまう。

ナチスの脅威に対し、イギリス国内ではチェンバレンや外相のハリファクスは、イタリアのムッソリーニを仲介にドイツとの和平工作を探り、チャーチルと対立。
「徹底抗戦せよ、とはヒロイズムに過ぎない。イギリス国民を危険にさらすだけだ。これ以上犠牲を増やすのか!」。
レイトンがタイプを打つそばには軍人の写真が。
「恋人かね?」とたずねるチャーチル。
「兄です。ダンケルクからの撤退戦で戦死しました」。
その言葉はチャーチルに重く響く。

イギリスの未来をどうするのかー?
新聞のヒトラーの写真に「ペンキ屋め!」とののしるチャーチル。
そんな中、彼の私邸に夜、訪問者があった。
妻のクレメンティーン(クリスティン・スコット・トーマス)は「キングです」と告げる。
やってきたのは国王・ジョージ6世(ベン・メンデルスゾーン)だった。

「地下鉄には乗ったことがない」と豪語していたチャーチルは、会議をすっぽかしてロンドンの地下鉄に乗車。
居合わせたロンドン市民たちは突然の首相の出現にびっくりしながらも、彼から、ドイツと和平交渉の道を探ったほうがいいか訊かれると、老若男女、幼い女の子まで、
「never!」という答えを口にした。ヒトラーには屈しない、と。
チャーチルは古代ローマの詩人・ホラティウスの詩を口ずさみ始めた。
「遅かれ早かれ人間は皆死ぬのだ・・」
地下鉄の車内にいた黒人男性があとにつづいて暗唱し始める。
「ならば強敵に立ち向かって死ぬ方がいい。死んだ祖先や神々の神殿のために」。

チャーチルはついに決断する。
「主権と安全保障のためにナチスと和平を結べば、どうなるか。
カギ十字の旗がロンドンにはためくのだ! バッキンガム宮殿の上に! ウエストミンスター寺院に!」
そして下院で、
「We shall fight! We shall never surrender!」と演説を行う。
いかなる犠牲を払おうとも、我らの島を守る。飢えに苦しむとも、我々はけっして降伏しないのだ、と。


ゲイリー・オールドマンの特殊メイクが話題になったこの映画、たしかに彼のチャーチルへの「なりきりぶり」はすごい。
映像で見るチャーチルの姿に迫っているし、特殊メイクがメイクとわからない変身っぷりだ。
あの「レオン」の憎たらしい麻薬捜査官とはだれもわからない。
この仕事で、アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を日本人の辻一弘氏が受賞したのは記憶に新しいが、辻さんは京都出身。
インタビューも京都弁のままで、中学生の頃「スター・ウォーズ」などの特殊メイクに魅せられて、独学で勉強を始めて高校卒業後渡米したという。
当地の関西ローカルニュースで、辻さんの高校時代の美術教師が、
「辻くんが授業でつくったオブジェです」と見せていたのが、木を彫った作品なのだが、段ボール紙の上を昆虫のフンコロガシが這っている構図。
フンコロガシもうまく彫っているが、段ボール紙がよれてシワができているところなど、その質感が凄くリアルで、とても木彫には見えない。
その教師は辻さんの作品をずっと保管していて、「君たちの先輩にこんなすごいものを作る人がいたんだよ」と、毎年授業で生徒に見せているそうだ。

映画を見て、当時のヨーロッパって、実質イギリスのみが、ヒトラーに対峙できる唯一の国だったんだなと改めて思う。
フランスもナチスに占領されたし、スペインは中立と言いながらファシストのフランコは枢軸国寄りだったし。
和平交渉などしても、このままヒトラーに国を売り渡すだけだ、それなら戦うしかない、という悲壮な当時のイギリス国民の心情は伝わってくる。

ただ、どうだろう。「愛国心涵養」にはうってつけの映画なのだろうけど、
「国家存亡のためにはいかなる犠牲を払うことをいとわない」セリフが繰り返されると、
「平和ボケ日本人」と言われてもやっぱりなんだかなあ・・と思うのだ。

最近見た、やはりナチスに侵攻されたノルウェー国王の苦悩を描いた「ヒトラーに屈しなかった国王」もそうだが、第二次大戦を映画で描くと、永久にドイツって悪役扱いなんだよね・・と、大学時代ドイツ史専攻だったわたしは、なんだかドイツ人が気の毒になってもくる。

さて、ウィンストン・チャーチルは戦後ノーベル賞を受賞している。
しかも、平和賞でなく文学賞。
回顧録で評価されるぐらいだから、映画にも出てくるように彼の演説も古今の詩句を引用したり、キャッチーなものが多い。
ヨーロッパの教養人はホラティウスの詩がすらすら出てこなきゃいかんのだなあ。
「鉄のカーテン」ももとはチャーチルの命名でしたね。
(3月30日、大阪ステーションシティシネマ)
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