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2023年12月15日09:11

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1644

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1644      

砂原浩太朗 「霜月記」         

神山藩シリーズの三作目。今回は奉行が主人公だ。
奉行とは、今日の裁判官と警察署長を合わせた
ようなもの。(県警トップと言ってもいいのだ
けれど、江戸時代の藩は今の県よりはるかに小さ
かったので、警察署長と表現させてもらった。)
ただし、裁くのは町民の犯罪であり、武士の犯罪は
大目付の仕事となる。

主人公は、代々奉行職をつかさどる家の若者18歳。
突然、父の奉行が書置きを残して失踪した。何日も
放置しておくわけにいかず、息子がいきなり奉行に
つく。部下の与力などのサポートでなんとか仕事を
すすめていると、殺人事件が起こった。被害者は
大店の番頭だった男で、店の金を使い込んだことで
免職となっていた。

この事件の捜査と、行方知らずの父親捜しとを若き
奉行は行っていく。彼に協力するのは、元奉行で
引退している祖父、そして竹馬の友の二人だ。

次第に分かってくる犯罪は、時代小説でよく見られる
もので、新鮮さはない。読みどころは、武士の父と
息子の関係性だ。ここでは、祖父と父、父と息子の
2組の親子の関係が表されている。

この作家は、季節や自然の描写に優れていて、時代
小説の王道を感じさせられる。ストーリー造りもうまい。
ただ、本作品に関しては、人物の性格などが十分
語られているかと言えば、そうではない。例えば、
主人公の親友は重要な役割を果たすのだが、彼の
人物像は薄い。

主人公らが通う居酒屋や親友の妹など、興味深い
人物も登場するのだが、あまり出番はない。
もう少しページ数を増やして厚くしたら、読み応えが
ある作品に仕上がったような気がする。
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