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2023年05月19日16:48

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1604

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1604

高山羽根子 「首里の馬」

3年前の芥川賞受賞作品。ハードカバーでも
150ページ弱という中編。

タイトルが示す通り、沖縄を舞台としている。

主人公の未名子は20代の女性で一人で暮らして
いる。彼女の仕事は2つあり、1つは、ある老婆が
所有する郷土資料館の記録保存で、こちらは無給だ。
もう1つは、生活の糧ということになるが、オンライン
通話。相手は3人の外国にいる日本語を話す外国人。
彼女が毎回クイズを出し相手が答えるというわけ
だが、クイズの後に雑談を楽しんでいる。この
雑談から彼女は自分の小さな世界以外のいろいろな
世界を知る。

郷土資料館のオーナー順は、仲間らとコミュニティを
つくって暮らすなど、世間から離れた暮らしをして
いたが、歳をとり沖縄に移住している。資料館には
誰かが訪れることもなく、順には娘がいるものの、
資料に関心がなく、彼女が死んでしまえば廃棄に
なる可能性が高い。

ある日、未名子の家の庭に宮古馬が迷い込んでくる。
宮古馬(ナークー)は沖縄にしかいない馬の種類。
彼女はいったん馬を地元の関係者に預けるが、
自分で育てる決心をする。

舞台が沖縄なので、先の戦争に関わる話かと
思ったが、戦争が直接的に語られることはない。
しかし、オンラインの相手の中には、詳細は
分からないものの自由が得られない厳しい
環境にいる人もいる。

なかなか難しい話で、テーマは判然としないが、
たぶん知識と記憶が今の我々には重要である
というメッセージなのかなと思う。つまり、
物理的に何かを得たり所有すること以上に
精神作用が重要であり、そのために既存の
情報だけを頼るのでなく、一つひとつの知識を
大切にし、それを記録として残していくことが
社会にとって有用だということだろう。
だとすれば、この小説の舞台が沖縄ということも
理解できる。沖縄には、あまりにも多くのことが
記録から消えてしまっているのだから。

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