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2023年12月30日14:10

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1647

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1647        

塩田武士 「存在のすべてを」       

今年の複数のメディアが選ぶ国内ミステリーの
上位に選ばれた作品。ハードカバーで460ページの
大作だ。

2件同時に起こった子どもの誘拐事件。捜査にあたる
警察は犯人に翻弄される。一人はすぐに無事帰ってきたが、
あとの一人は帰ってこない。そして、当時4歳の
男の子は、なんと3年後に祖父母の元へ帰ってきた。

物語の中心は、この男の子が3年の間どのように
暮していたか、そして思春期をどのようにおくり、
今はどうしているか、ということである。

多くの人たちが登場する。誘拐された子、その
親と祖父母、誘拐犯、事件を追う刑事、記者、
売れない画家とその妻、画廊経営者とその娘、
画家と大学の美術の先生、絵画コレクター、
等々。

群像小説の体をなしているが、中心は売れない
画家とその妻、誘拐された子ども(青年)の
中高時代のガールフレンド、そして新聞記者だ。

誘拐から現在まで30年間が描かれ、ずっしりと
読み応えがある。長編だが、ダレはない。枝葉の
話もないわけではないが、それほど邪魔には
なっていない。全体を通して、日本の美術界の
内幕も明かされていく。

話の展開に読者は振り回されることになるが、
この振り回されを楽しむべき作品だ。
この著者のこれまでの代表作は「罪の声」だと
思うが、それに匹敵する傑作であろう。

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