☆洋ちゃんの読観聴 No. 1631
國分功一郎 「暇と退屈の倫理学」
東大と京大の生協でベストセラーになっている
本だそうだ。著者は東大の哲学専門の先生だ。
哲学と聞くとちょっと引きそうかもしれないが、
本書は大変平易な文章なので、専門知識が
なくても読める。第一、ハードカバーではなく
新潮文庫なのである。
なかなか面白い議論が展開される。たとえば、
パスカルは気晴らしについて論じている。
人はじっとしていられず、退屈に耐えられない
ので気晴らしを求める。人は移動生活から
定住生活に移り、単調な生活になり、それ故
刺激を求めるようになった。
パスカルは、こうも言う。狩猟をする人は
ウサギが欲しいのではなくウサギ狩りをしたい、
のだと。要するに対象物ではなく熱中を求めて
いる。
國分先生は、古今の哲学者−−スピノザ、ルソー、
ニーチェ、ハイデッガーなどーーを取り上げ、
それぞれの退屈の概念を紹介している。
とりわけハイデッガーにかなりのページを
割いている。そして、ハイデッガーのキモとなる
理論を踏襲しつつも、そこから一歩踏み出した
持論を展開している。
現代社会における消費と浪費とはどう違うのか?
贅沢とは何なのか? 我々は自由に生きているのか?
いろいろと考えさせられるテーマが散りばめ
られている。
自分が暇だ退屈だと思っている方、ぜひ一読
してほしい。また、多忙きまわりない方にも、
ぜひ読んでほしい本だ。
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