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2020年08月11日07:59

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1412

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1412            

ドン・ウインズロウ 「壊れた世界の者たちよ」

アメリカの犯罪小説の今や第一人者と呼んで
いいだろうドン・ウインズロウの新作は
中編集である。文庫本725ページに6編が
収められている。

ウインズロウと言えば、メキシコの麻薬組織を
描いた3部作の3作目「ザ・ボーダー」が
昨年刊行されたばかり。多くの読者は、まだ
その余韻に酔いしれているだろう。こんなに
早く次作が出るとは僕も思っていなかった。

中編集ということで、次回の長編までの”箸休め”
かなと思っていたが、これがなんとなんと
大傑作なのだ。6作品すべてが傑作だし、
さらに一つずつの作品が色合いが異なっており、
多彩である。

表題作の「壊れた世界の者たちよ」は、
2018年刊行の「ザ・フォース」の系列作品で、
ニューオーリンズを舞台に弟が麻薬組織に
殺された警察官が犯人を追う。

「犯罪心得一の一」はスティーヴ・マックイーン
へのオマージュ。宝石泥棒を刑事が追いかける
話だが、マックイーン作品を思わせるシーンが
出てきてオシャレだ。

一風変わった作品が「サンディエゴ動物園」で、
なんと拳銃を握ったチンパンジーが動物園から
逃げ出すというハプニングだが、この捕獲を
担当した警察官のなんともおかしく、かわいい
お話。

「サンセット」はレイモンド・チャンドラーに
ささげた一品。私立探偵が犯罪に染まった伝説の
サーファーを追う。ここではウインズロウの昔の
作品に登場した主人公らが現れるので、昔からの
ファンにはうれしいプレゼント。

最初の作品をのぞき、サンディエゴを中心に
カリフォルニアの太陽と海を感じさせる作品が
続いたが、5作目の舞台はハワイだ。地上の
楽園とも言われるハワイだが、ここでも
麻薬ビジネスが広がる。

そして最後は著者得意のメキシコ国境で、
母と娘が離れ離れになった難民の問題に
国境警備局の隊員が立ち向かう。トランプ
大統領への痛烈な批判を表しているが、
なんともやりきれない。

ウインズロウという作家は、麻薬組織に
立ち向かう警察官や、組織内にあって
悩む幹部など、ストレート勝負の作家と
僕は思っていたが、こんなに引き出しが
多いとは驚かされた。

まだ60前。もっともっと優れた作品を
世に送ってくれることだろう。


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