mixiユーザー(id:11487068)

2020年07月13日07:42

15 view

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1407

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1407               

菊澤研宗 「組織の不条理 〜日本軍の失敗に学ぶ〜」

2000年に単行本として出版され、2009年に文庫と
なり、さらに2017年に別の出版社から再度文庫本と
して出された。

本書は、第二次世界大戦における日本軍の失敗を
分析しているが、この分析アプローチの手法は
他の組織の行動にも広く適用可能であり、それ故
単に歴史上の過去を振り返るだけでなく、今に
生きる我々にも十分役に立つ書であろう。

彼の学問的立脚点は新制度派経済学というものだ。
正統派経済学の人間観では、人は完全合理的に
行動し、自分の利益を完全最大化する。もし、
すべての人が合理的で利益を追求するのであれば、
個と全体は一致するので不条理は発生しない。
しかし、人間は神ではない。人間は完全に合理的
でもなければ、完全に最大利益を追求しない。
理性より感情が勝る場合もある。時には不合理な行動へと
走る。

著者の新制度派経済学の人間観は、人は完全合理的
でもなく、非合理的でもない「限定合理的」であり、
そうした中で利己的利益を追求する。限定合理的で
機会主義的な世界では、「取引コスト」が発生する。

例えば、知らない人と交渉する場合、自分が騙されたり、
損な契約をさせられたりしないように、取引前に
コストをかけて相手を調査する。契約後も相手を
監視するモニタリングコストが発生する。つまり、
交渉・取引には「取引コスト」が発生するのだが、
このコストが人間関係上でも発生してしまうのが、
組織が合理的に失敗する要因であると著者は言う。

人間関係上の取引コストという考えに基づき、
著者は、太平洋戦争における日本軍の失敗を分析
するとともに、近年の日本企業の失敗も解説している。

地味なテーマではあるが、興味深い学説だと
思った。ともすれば、日本の独特とも言われる
組織分析は、最後は゛空気”で物事はきまり
誰も責任者がいないという奇妙な話で終わったり
しがちだが、それに比べて本書の主張のほうが
説得力があるように思えた。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年07月>
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 

最近の日記