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2020年01月06日07:35

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1371

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1371

川越宗一 「熱源」                        

2019年の歴史時代小説で一番との評判が高い
作品。著者は本作がデビュー2作目なのだが、
既に大家の雰囲気を感じさせる。

デビュー作は秀吉の朝鮮出兵にまつわる
話だったが、本作品のテーマはアイヌである。

時代は明治。ロシアと日本との狭間で自らの
アイデンティティに苦悩するアイヌを描く。

和人が樺太(サハリン)に入り日本人の生活が
一部入ってきたアイヌの人たちだが、その後
ロシアが入りロシア語やロシアの文化も入って
くる。だが、そのロシアと日本が戦争をすることに
なり、アイヌの人たちは土地勘があるので、
それぞれの手伝いに駆り出される。

主人公はヤヨマネクフで樺太出身だが、
北海道に移住し、そして樺太に戻る。

もう一人の主人公はブロニスワフ・ピウスツキ。
彼はポーランド人だが、当時ポーランドという
国は存在せずロシアの支配下にあった。
母国の独立を望むものの、弟や友人らの
武力闘争には参加しない。しかし、彼らとの
関係から捕まり政治犯となる。だが、
少数民族の研究が許され、樺太へ赴任する。

国を持たないアイヌ、そしてやはり国を
持てないポーランド。それぞれの民族が
覇権国の論理とは別の考えを模索する。

ピウスツキをはじめ大隈重信など実在の
人物が登場する。これまで歴史小説家が
あまり取り上げてこなかった地域と民族の
話で新鮮な感がある。また、日本初の
南極探検の逸話もあり、歴史の勉強になる。

小説の時代から100年経っている今日だが、
国家と民族の問題は今なお解決から
ほど遠い。
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