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2018年05月09日08:54

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1268

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1268

白井聡 「国体論 菊と星条旗」                  

「永続敗戦論」で注目を浴びた気鋭の社会学者、
白井聡氏の最新刊。

明治以降の日本近代を維新から敗戦までと、戦後に
分けて比較分析する。そのキーワードは「国体」だ。

戦前の日本の国家体制は天皇を中心とする国体で
あったが、戦後においては日本は民主主義国家となり
国体はなくなったと一般的にはされている。だが、
ほんとうにそうなのか?という疑義を著者は持つ。

戦後の日本は、米国軍隊の恒常的かつ無制約の駐留を
受けている。沖縄問題で象徴されるように米国従属体制と
なっており、果たして日本は独立国と言えるのだろうか。
米国軍隊の日本駐留は、冷戦時代においてはソ連の
脅威のためとされたが、今その論拠がなくなっている。

著者の着目は、明治から戦前までの国体を3時期に
分け日本における天皇の存在意義を説明し、さらに
面白いことに戦後の日本について天皇の代わりに
アメリカを置いて、やはり3つの時期に分けて分析
している。そして戦前の3区分と戦後の3区分には
相似点が多く見出されると言う。

そして戦争末期と今をなぞらえるとき、行き先の
見えない日本について警鐘を鳴らしている。
安倍首相の唱える「積極的平和主義」とは、
米国に従属し、自衛隊の機能を拡張し、“積極的”に
米国の対外軍事に参加することであり、そのための
安保法制による集団的自衛権なのである。

この本の冒頭で著者は一昨年夏の天皇陛下の
退位に向けた「お言葉」を紹介している。
僕自身も、お言葉を聞いたときおやっと思った。
慎重な言い回しではあったが、陛下の戦後民主主義の
危機を読み取ったからである。

天皇皇后両陛下の内外の戦争被害地への度重なる
訪問を見ても、陛下の先の戦争への思いは強いし、
安倍政権の方向性とは異なるものであることは明白だ。

この冒頭は読者向けの見事な“つかみ”だと思う。

1960年、1970年の日米安保条約改定の際の
反対運動の盛り上がりは今ない。与党どころか、
ほとんどの野党も安保条約廃止などと訴えていない。
だが、ほんとうにアメリカ追随で間違いないのだろうか? 
そして日米地位協定(他の国々でも米国軍隊は駐在
しているが世界で最も米国に有利な協定)をそのままに
しておいていいのか? 経済的にも失われた20年が
30年になろうとしている。

日常生活に関係ないから目をつぶる・・・というわけには
いかない、とても重大な問題である。


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